中部大学と慶應義塾大学(慶大)の両者は2月17日、北海道から本州、四国、九州に広く分布し、湿地や田んぼの水路などに見られる、日本の里山を代表するホタル「ヘイケボタル」のオスが、ミリ秒レベルの「瞬き(またたき)」を伴った点滅発光でコミュニケーションをとっていることを明らかにしたと共同で発表した。

  • 発光するヘイケボタルのオス

    発光するヘイケボタルのオス(出所:共同プレスリリースPDF)

同成果は、中部大学 応用生物学部の高津英夫研究員、同・大場裕一教授、慶大 理工学部の南美穂子教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

ホタルの成虫は、光を使ってオスとメスがコミュニケーションを行っており、種や雌雄の違いなどを見分けるのに用いられている。そうした中、ヘイケボタルのオスもメスも行うミリ秒レベルの瞬きを伴う点滅発光については、詳しくわかっていなかった。そこで研究チームは今回、その瞬きの意味の解明を試みたとする。

まず、愛知県知多郡東浦町の水田地域において、野生のヘイケボタルのビデオ撮影を実施し、その動画を用いた分析が行われた。その結果、草に止まっているホタルには「オス」「未交尾のメス」「交尾済みのメス」の3タイプがいて、それぞれが異なる発光パターンを示すことが明らかになったという。

オスのヘイケボタルは、ミリ秒レベルの速い瞬きを伴う点滅を繰り返しながら、未交尾のメスに近づいていく。この時の未交尾のメスの点滅には瞬きがなく、1回の発光時間も非常に短くなっていることがわかったとする。一方、草に止まっている交尾済みのメスの点滅には、オスのもののような瞬きがあり、1回の発光時間はやや長くなっていた。つまりオスは、瞬きをせず1回の発光時間が短い発光パターンを交尾相手として見分けている可能性があるとした。

次に研究チームは、ヘイケボタルと同じ黄緑色に光る小型LEDランプを用いて、プログラミングにより1回の発光時間とその時の瞬きの強弱を変えられる「e-firefly」(通常「電子ボタル」)を開発した。この電子ボタルを野外に設置し、その観察データを統計解析した結果、草の上にいたヘイケボタルのオスは、「瞬きが小さく、発光時間が短い光」により強く誘引されることが確認されたという。これは、オスは瞬きがなく1回の発光時間が短い発光パターンを交尾相手として見分けているという、野外観察から推測された仮説を支持する結果だった。

  • 電子ボタルe-firefly。中心の部分がLED素子で、発光パターンはマイクロコントローラで制御されている

    電子ボタルe-firefly。中心の部分がLED素子で、発光パターンはマイクロコントローラで制御されている(出所:共同プレスリリースPDF)