DigitalBlastは2月8日、国際宇宙ステーション(ISS)での細胞実験に特化した小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ Alpha(アマツ・アルファ)」の開発に着手したことを発表した。

  • 小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ Alpha」のイメージ

    小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ Alpha」のイメージ(出所:DigitalBlast Webサイト)

同社は、月面での生態循環維持システム構築に向けたプロジェクト「NOAH(ノア)」を立ち上げ、その第1弾として、植物の重力応答に関する基礎データを取得することを目的として、小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ」を開発し、2024年のISSへの設置・運用を目指している。

そして今回は、宇宙環境が細胞に及ぼす影響を把握する必要があることから、NOAHの新たな取り組みとして、微小重力環境から低重力環境までのさまざまな重力環境での細胞培養実験に特化したAMAZ Alphaの開発をスタートさせた。同装置はAMAZと同様に、月面と同じ地球の6分の1の重力を再現するほか、回転速度を変更することによりさまざまな重力環境を再現し、同時比較することが可能だという。多様な重力下での培養を通して、細胞の重力応答などの基礎データを取得できるとする。

またAMAZ Alphaは、ユーザビリティを意識したAMAZの設計思想をそのまま引き継いでいる点も特徴。これまでのISSなどでの細胞培養実験では、培地の交換など、宇宙飛行士による操作や作業が発生していた。それに対して同装置では、培地や試薬の自動送液機能を搭載し、宇宙飛行士の作業工数を削減するとした。また細胞観察を行う機能として、蛍光観察装置を内蔵する予定だという。組み込まれた蛍光観察装置により、実験環境下のまま細胞の変化を観察することができ、装置内で実験を完結できるとしている。

ISSへの搭載目標はAMAZで掲げる目標から1年後の2025年ごろとし、民間企業や研究機関向けに実験環境として提供する予定としている。

また今回は同時に、NOAHの今後の宇宙実験サービスの展開についての発表も行われた。従来のAMAZと、今回発表されたAMAZ Alphaに加え、高等植物の栽培実験を目的とし給水機能を備えた「TAMAKI(タマキ)」、タンパク質結晶の成長を扱うため周辺温度環境を制御する可搬型インキュベータ(AMAZやAMAZ Alphaを収納して精密な温度管理環境下での実験を可能とする装置)などの開発を計画。さらには、iPS細胞などを用いた立体培養実験を提供するため、「AMAZ Omega(アマツ・オメガ)」も構想しているとした。

なお同社は今後も、さまざまなライフサイエンス宇宙実験ニーズに対応した装置を開発していくとしている。

  • 今後のプロジェクト「NOAH」の宇宙実験サービスの展開

    今後のプロジェクト「NOAH」の宇宙実験サービスの展開(出所:DigitalBlast Webサイト)