東京大学(東大)は12月22日、銀河団に属する、成長をやめた(星の成長をやめた)銀河は、銀河団の中心にある巨大楕円銀河の長軸の向きにより集まって分布しており、しかもこの偏った分布は約70億年前までの宇宙において見られる普遍的なものであることを明らかにしたと発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科 天文学専攻の安藤誠大学院生、同・嶋作一大准教授、同・伊藤慧日本学術振興会特別研究員らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立天文学会が刊行する天文学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。

数百から数千の銀河からなる大規模集団である「銀河団」に着目したこれまでの研究の多くでは、銀河団に属する銀河の性質は等方的、つまり銀河団中心から見てどの方向を調べても銀河の性質は同じであるという仮定の下で行われてきた。ところが近年の研究で、星の新たな形成(銀河の成長)をやめた銀河の分布が、銀河団内の特定の方向に偏っている可能性が指摘されているという。

銀河団の中心には、巨大な楕円銀河(中心銀河)が1つあることが多い。成長をやめた銀河は、その中心銀河の長軸方向(楕円の伸びた方向)に、より高い頻度で存在していることがわかってきた。これは銀河団内に銀河の星形成を止める作用が、中心銀河の長軸とそろった方向では強く、それに垂直な方向では弱く働くためだと解釈されている。

ただし、そのような示唆は現在の宇宙に限られた研究や、少数の銀河団サンプルの観測から得られたものだったとする。つまり、この偏りが宇宙の幅広い年代で普遍的なものなのか、またどの銀河団でも見られる一般的な傾向なのかについては不明だったという。

そこで研究チームは今回、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム)」による大規模観測によって撮像された5000個を超える大量の銀河団を対象に、星の形成をやめた銀河の割合が、中心銀河の向きに対してどのように変化するのかを調べることにしたとする。