国際医療福祉大学(医療福祉大)、東京大学(東大)、国立がん研究センター(国がん)の3者は7月15日、国内の大規模な入院データベースを用いて約3万5000症例の食道がん手術症例を解析し、手術日にステロイドを使用した症例は使用しなかった症例と比較して、術後の在院死亡や術後合併症の呼吸不全が有意に少なかったことを示したと発表した。

同成果は、国際医療福祉大 医学部 消化器外科学教室の平野佑樹講師、同・板野理主任教授、東大大学院 医学系研究科 乳腺・内分泌外科学の小西孝明医学博士課程大学院生(東大医学部 附属病院 乳腺・内分泌外科 医師兼任)、同・医学系研究科 先進循環器病学講座の金子英弘特任講師、同・医学系研究科 臨床疫学・経済学の康永秀生教授、慶應義塾大学 医学部 外科学教室(一般・消化器)の北川雄光教授、国立がん研究センター中央病院 食道外科の大幸宏幸科長、東大医学部 附属病院 循環器内科の伊東秀崇研究員、慶大医学部 外科学教室(一般・消化器)の松田諭助教、同・川久保博文准教授、筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野の宇田和晃助教、東大大学院 医学系研究科 臨床疫学・経済学の松居宏樹助教、東京医科歯科大学大学院 医療政策情報学分野の伏見清秀教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、外科に関する全般を扱う学術誌「Annals of Surgery」にオンライン掲載された。

食道がん手術は手術操作が、くび(頸部)~胸部~腹部と広範囲に及ぶために手術ストレスが大きく、ストレスに対する全身の過剰な炎症反応(全身性炎症反応症候群)が一因となって、呼吸不全などの術後合併症を起こすと考えられている。

そうした中、その過剰な炎症反応を抑えるため、1990年代の日本において手術直前にステロイドを投与する手法の研究が行われた。8つの小規模な臨床試験が実施され、その結果をまとめた346症例のメタ分析によって、ステロイドの術前予防投与が食道がん術後の合併症リスクを軽減することが示唆されたことから、日本の食道がん診療ガイドラインでは術後合併症予防目的でステロイドの術前予防投与が「弱く推奨」されている。

しかし、根拠となった研究はいずれも小規模であり、その有用性は特に海外では議論の的だったという。また過去の臨床試験はすべて開胸手術が対象だったので、近年世界的に普及している低侵襲な胸腔鏡下手術でステロイドがどの程度有効であるか不明だったなど、過去の研究では術後在院死亡に与える影響は十分に評価できていなかったとする。

そこで研究チームは今回、日本の医療ビッグデータ(厚生労働科学研究DPCデータ調査研究班のDPCデータベース)を用いてステロイドの術前予防投与と、食道がん術後の在院死亡や呼吸不全との関連を調査することにしたという。