後継機“はやぶさ3”は実現するのか?

プロジェクトに大きな区切りが付いたということで、気になるのは今後についてだ。JAXAの次のサンプルリターンとしては火星衛星探査計画「MMX」があるし、イオンエンジンを発展させた計画としては「DESTINY+」があるが、直系となる小惑星サンプルリターンのプロジェクトはまだ立ち上がっていない。

津田プロマネは、将来の探査について言及。「C型小惑星の素性が明らかになり、始原天体の多様さを理解することの重要性がより明確になった」とした上で、「サンプルリターン探査には、科学的威力がある。人類がまだ訪れたことがないD型やE型の小惑星、さらに彗星などのサンプルが得られれば、科学的成果は大きい」と期待する。

実際に、科学者側からの期待はどうなのか。プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎氏は、「太陽系には特徴的な始原天体がほかにもたくさんあり、そういったものを探査していくのは非常に重要」としつつも、ただ「工学に対しては、はやぶさ2と同じ構成で次をやって欲しいという要求はあまりない」と述べる。

  • 渡邊誠一郎氏

    プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎氏(名古屋大学大学院 環境学研究科 地球環境科学専攻 教授)

はやぶさ2は2回のタッチダウンを成功させ、特に2回目は60cm以下という、驚異的な着陸精度も実現したが、それは胃が痛くなるようなギリギリの運用で得られた成果だった。もともと、はやぶさ2は安全な平地に着陸する想定だったが、リュウグウに着いてみたら、どこも岩だらけ。平地はほとんどなく、着陸場所の選定は難航した。

未踏の小惑星は、行ってみないと表面の様子が分からないという宿命がある。リュウグウのケースだけに最適化するわけにはいかないが、次回もこのスタイルのままで、というわけにもいかないだろう。後継機を開発するのであれば、岩だらけでも対応できるよう、おそらく大幅な改良が必要になる。

渡邊氏はリュウグウでの探査時、「運用チームには、そこの岩の上から採取してくれとか、もっと無謀なことを言っていた」と笑う。「表面のここだ! という場所から、本当に欲しいサンプルを自在に取れるようにして欲しい。そんなミッションが実現できたらいい」と、将来の探査機に対する期待を述べた。

小惑星サンプルリターンは、日本が先駆けて切り拓いた分野である。後継機の名称が「はやぶさ3」になるのかどうかは何とも言えないが、早期の実現を期待したいところだ。