一般的な無孔質の二次元ナノシートは、互いに積層してしまうと、最終的に比表面積を大幅に失ってしまい、多くの電気化学応用への可能性を低くしてしまっていた。今回開発された多孔性炭素ナノシートは、シート内に多くの細孔を有しており、再積層して電極化した際でも、多くの触媒活性部位を保持できるようになっていることが特徴だという。

この多孔性炭素シートは、厚さ1.5nmの極薄二次元シートになっており、その表面には無数の細孔が存在しており、それらはシート中を貫通している。その細孔径は、マイクロ細孔領域からメソ細孔領域の5nm程度まで分布があり、PCP/MOFの剥離条件や炭化条件などを変えることで、ある程度調節が可能だとする。シートの膜厚よりも大きな細孔がシート中に存在するため、メッシュのような形態の炭素ナノシートともいうことができるという。

  • 多孔性炭素ナノシートの合成プロセス

    多孔性炭素ナノシートの合成プロセス (出所:NIMSプレスリリースPDF)

この特徴により、細孔径よりも小さな分子でシート内の細孔表面を簡単に修飾することもできるようになる。たとえば、出発物質由来の窒素がドープした炭素物質を得ることができるため、酸性下での酸素還元反応(ORR)活性を発揮できるように、凝集することなくFeN4活性サイトを均一に形成することも可能だという。

酸性条件において酸素還元反応が調査されたところ、half-wave potentialが0.83V vs.RHEとなり、ほかのこれまで開発されてきた炭素電極と比較して、最も良好な値を出しており、実際のH2/O2燃料電池試験においても、634mWcm-2という高い値が確認された。論文では、第一原理計算を用いて、同定されたFeN4活性部位と細孔径分布分析に基づいて、反応メカニズムをさらに解明しているとする。

  • PCP/MOF前駆体の電子顕微鏡像

    (a)PCP/MOF前駆体の電子顕微鏡像。(b~f)生成物の電子顕微鏡像。(d)高分解電子顕微鏡画像では、数層重なったグラフェン構造が確認できる。(e)Fe原子のシングルアトムサイトが白く光っており、それらはカーボン中に分散している。(f)膜厚は、1.5nm程度であることが確認できている (出所:NIMSプレスリリースPDF)

今回の多孔性炭素ナノシートは、二次元形態や高い多孔性など、ほかの二次元ナノシートや空間物質にはない特徴を有しており、エネルギー変換・貯蔵などの幅広い電気化学的な応用で活躍できる可能性が期待されるという。

さらなる触媒活性の向上を実現するため、今後はマテリアルズインフォマティクスを活用し、性能に起因する重要因子や最適値を抽出し、その結果に基づいて窒素含有量、表面積、細孔径などを調節し、ほかの金属元素を用いたシングルサイト触媒の開発を進めていくとしている。