米商務省は1月25日(米国時間)、先般実施した「半導体サプライチェーン情報要求(RFI)」に対して世界中から寄せられた150件を超える回答の分析結果を発表した。

米商務省は2021年9月、世界中の半導体デバイス企業、ユーザー企業、仲介業者などに半導体の在庫、ならびに需要と供給などといった内部情報を自主的に米商務省に提出するよう要求しており、今回公表された主な調査結果はそうして得られた情報を元にしたものとなる。

ちなみに米商務省は、この提出要求に応じない企業などに対しては国防生産法を適用し強制力を持って提出させるとしていたが、これまでのところ、そのような動きは見られない。

半導体不足は少なくとも今後6カ月は継続の見通し

主な調査結果は以下の通り

  • 2021年の半導体の需要は、2019年比で17%ほど高くなっているものの、相応の供給量の増加がないため、消費者は供給不足を経験している。供給と需要の乖離は大きく、今後6か月は半導体不足問題が続く見通しである。
  • バイヤーが強調した半導体製品の在庫中央値は、2019年の40日から2021年には5日未満に減少した。これらの在庫は、主要産業ではさらに少なくなっている。
  • 半導体メーカーの大部分は、90%以上の稼働率で工場を操業している。つまり、フル稼働状態でもはや増産の余地はほとんど無く、新しいファブを建設しなければ追加の供給は限定的である。
  • 回答者が特定した主なボトルネックは、ファブ生産能力追加の必要性である。電気機器を組み立てるために半導体とペアになっている他の電子部品の生産能力不足も問題である。
  • 半導体工場の稼働率推移

    「半導体サプライチェーン情報要求(RFI)」への回答から作成された世界の半導体工場稼働率の四半期ごとの推移 (出所:米国商務省)

ボトルネックの半導体製品と技術ノードも特定

また、商務省では需給ひっ迫のボトルネックとなっている半導体の種類を以下のように製品種別ならびにプロセスノード別でも特定したという。

  • 需給ひっ迫のボトルネックとなっている半導体は、レガシープロセスのロジックチップ(自動車、医療機器、その他の製品で使用)、アナログチップ(電力管理、イメージセンサ、RFで使用)、オプトエレクトロニクスチップ(センサおよびスイッチ用)である。
  • RFIの回答により、需要と供給の不一致が最も深刻なプロセスノードを特定した。
    • マイクロコントローラ(MCU):40/90/150/180/および250nmプロセス製品
    • アナログ半導体製品:40/130/160/180および800nmプロセス製品
    • オプトエレクトロニクスチップ:65/110/および180nm製品

これらのプロセスノードにおけるボトルネックの解決に向け、商務省は今後、数週間の間に、これらのプロセスノード固有の問題解決に半導体業界と協力して取り組んでいくとしているほか、これらのレガシーノードの製品(自動車用や医療機器用など)の異常に高い価格に関するクレームについても調査を実施するとしている。

米国内での半導体製造への資金提供が必要という我田引水的な結論

商務省では、RFIの結果を踏まえ、米国はより多くの半導体を生産する必要があり、連邦議会は、長期的な供給の課題を解決するために、米国のイノベーションおよび競争法などを成立させ、国内半導体製造のために資金提供する必要があると結論付けている。

商務長官のジーナ・M・レモンド氏は「半導体のサプライチェーンは依然として脆弱であり、連邦議会が半導体製造の資金を支給する法案をできるだけ早く可決することが不可欠である。需要が急増し、既存の製造施設の稼働率が最大化している状況下では、この危機を長期的に解決する唯一の対策は、国内の製造能力を再構築することであることは明らかである。バイデン大統領は、国内の半導体産業を活性化するために520億ドルを提案しており、この資金提供のための法案が連邦議会で可決され大統領に送られるのを私たちは待ち望んでいる。この法案が成立すれば、米国内に多数の良質の雇用を創出し、米国の製造業を再構築し、これから先、米国内のサプライチェーンを強化することができる」と述べ、CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors)for America Actの成立に期待を寄せている。

なお、半導体製造強化のために米国政府が520億ドルを拠出する法案は、連邦議会でまだ最終的に成立しておらず、米GlobalFoundriesは、政府からの補助金支給が遅れていることを踏まえ、米ニューヨーク州にあるFab8の増設工事の延期を発表している。