半導体メーカーのSK Hynixや半導体ウェハメーカーのSK Siltron、半導体素材メーカーのSK Materialsなどの半導体および関連企業を抱える韓国第3位の財閥であるSKグループが、半導体および関連事業をさらに強化するため、事業再編に乗り出した。

半導体設計部門をSK Telecomから分離

SKグループの中核的存在でSK Hynixの親会社でもある韓国通信事業大手SK Telecom(SKT)は、半導体設計などを行う新会社「SK Square」を2021年11月1日に設立すると発表した。

2021年10月12日に開催されるSKT株主総会を通じてスピンオフ計画を最終決定した後、2021年11月1日付でSK Telecom(存続会社)とSK Square(新会社)に正式に分割する予定としている。Squareという社名は、「広場」や「累乗」を意味する言葉として選んだという。

SKTは従来通りデジタル通信インフラ事業に注力し、SK Squareは半導体の企画・設計および電子商取引(EC)、セキュリティ、デジタルヘルスケアなどの新分野に進出し、積極的なM&Aを通じて事業規模の拡大を目指すとする。半導体分野でも、積極的な投資やM&Aを進め、半導体製造を担当するSK Hynixとの相乗効果を図る一方で、半導体メモリとともにシステムLSI市場における韓国のリーダーシップを固めるための国家プロジェクト「K半導体戦略」の実現にむけた官民協力を強化することも掲げている。SKTとしては、2020年に独自設計のAIチップを発表して半導体ビジネスに本格参入しており、今回の取り組みは、その流れをさらに加速させるためのものとみられる。

持ち株会社がSK Materialsを吸収合併、半導体特殊ガスの新会社設立へ

SKグループの持ち株会社で投資専門のSKと先端素材分野の中核子会社であるSK Materialsは8月20日、それぞれ取締役会を開き、両社の合併を議決したと発表した。

SKがSK Materialsを吸収合併することで、SKグループのグローバル投資力とSK Materialsの事業開発力を統合し、先端素材分野の経営効率性の強化および合併法人の株主価値向上に注力するとしており、これによりSK Materialsの素材メーカーM&A投資部門は親会社のSKに吸収合併される一方で、半導体製造向け特殊ガスなどの半導体製造用素材事業部門はすべて、今後新設される新会社に移行する予定だという。この吸収合併は、10月29日に開催予定のSK Mateerialsの株主総会とSKの取締役会承認を経て、手続きを12月1日に完了させる予定だという。

先端素材分野のM&A事業推進事業はSKに一本化

これまで両社が別々に進めてきた先端素材事業の投資主体がSKに統一されることにより、グローバルパートナーシップ、買収合併(M&A)、投資など多様な経営戦略を通じ、高成長・高付加先端素材事業のグローバル市場に対する先取りをより効果的に加速化していくという。

何より合併法人の企業価値が高くなることによって、両社の株主も合併による株主価値向上の効果を享受することができる見通しだという。従来のSKの株主は、成長性の高い先端素材事業の比重が拡大するに伴い、企業価値の向上による恩恵が期待でき、既存のSK Materialsの株主も両社の先端素材領域のシナジー効果による価値向上だけでなく、SKが保有する多様な投資ポートフォリオの成長性および、SKの株主還元政策による実質的効果も得られるとしている。

SK Materialsは2016年、韓国化学大手OCI(元東洋化学工業)より半導体特殊ガス製造子会社OCI Materialsを買収し、その社名を変更する形で誕生した。翌2017年に昭和電工と合弁で特殊ガス製造会社であるSK Showa Denkoを韓国内に設立したほか、M&Aにより子会社を多数設立してきた。こうした投資を通じて半導体用プリカーサ、半導体用エッチングガス、フォトレジスト、OLED素材などに事業を拡張、その企業価値は現在、2016年比で約3倍以上の規模へと拡大され、最近では、半導体素材の国産化や次世代バッテリー向け陰極素材など、さらなる事業の多角化にまい進している。同社は、半導体製造向け特殊ガス分野で三フッ化窒素(NF3)の国産化を皮切りに、六フッ化タングステン(WF6)、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)などの特殊ガス分野で存在感を高めており、キオクシアの拠点がある三重県四日市にSK Materials Japanという現地法人を設置し、これらの特殊ガスの日本半導体メーカーへの売り込みを行うなど、グローバルな活動へとつなげている。