京都府立医科大学は6月25日、日本の13の研究チームが共同で、10万人以上の人々の健康状況を20年間にわたって追跡調査しているコホート研究「J-MICC STUDY」の一環として、座っている時間と死亡率の関係についての研究を行い、6万人を超える日本人を7.7年間追跡したデータを用いて、座っている時間が長いほど死亡率が増加することを確認したと発表した。

同成果は、京都府立医科大学 大学院医学研究科 地域保健医療疫学の小山晃英講師をはじめとする、佐賀大学、名古屋大学、愛知県がんセンター研究所、千葉県がんセンター研究所、鹿児島大学、名古屋市立大学、静岡県立大学、近畿大学、滋賀医科大学、徳島大学、九州大学病院の総勢28名の研究者が参加した共同研究チームによるもの。詳細は、米心臓協会が発行する「Journal of the American Heart Association」に掲載された。

座っている時間(座位時間)が長いことで、血行不良と代謝の低下を引き起こすことにより、死亡率の増加や循環器疾患の発症と関わることが、海外で多数報告されるようになっており、すでにガイドラインが整備されている国も出てくるなど、座位時間を少なくするよう提言なされるようになってきたという。

日本人の座位時間は、国際標準化身体活動質問票が作られた2011年のデータ(日本人5000人)によると、世界で一番長いという結果が出ているという。

  • 日中の座位時間

    国際標準化身体活動質問票が作られた2011年の世界各国の平日における座位時間の平均データ (出所:京都府立医科大学プレスリリースPDF)

しかし他国と比較した場合、日本国内での座位時間に着目した研究は限られており、これまで、日本人の解析対象者が1万人を超えるような大規模調査としては、「仕事中に座っている時間と死亡率の関係」、「テレビ視聴時間と循環器疾患死亡の関係」の2点が報告されているに留まるとされる。

そこで今回の研究では、6万4456名(男性2万9022名、女性3万5434名)の日本人を平均7.7年間追跡したデータを用いて、質問票が用いて日中の座位時間と全死亡(すべての死因を含む)の関係を、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無と、余暇時間の運動量に分けた検討が実施された。

日中の座位時間は、質問票をもとに、「5時間未満」、「5時間から7時間未満」、「7時間9時間未満」、「9時間以上」の4群に分けて解析が行われた。調整因子は、年齢、性別、居住地域、飲酒の有無、喫煙の有無、脳卒中既往歴、虚血性心疾患既往歴、高血圧・脂質異常症・糖尿病に対する服薬状況、余暇時間の活動量(METs)とされ、解析が行われた。

その結果、下記の3点が明らかになったという。

  1. 日本人の大規模研究として、初めて仕事中の時間および余暇時間を含む、すべての日中の座位時間が長いほど死亡と関係することが明らかとなった。
  2. 高血圧、脂質異常症、糖尿病の有無に関わらず、日中の座位時間の長さに伴い死亡率が高くなる。また、高血圧、脂質異常症、糖尿病の保有数が増えるほど、死亡率が高くなることが認められた。
  3. 余暇の身体活動量を増やしても、日中の座位時間の長さと死亡の関連を、完全に抑制するには至らないことが明らかとなった。

参加者全体では、日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡率は15%増加することが認められたという。さらに、生活習慣病の有病者ごとに検討されたところ、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の保有数に応じて、座位時間と死亡の関係は大きくなり、脂質異常症では18%、高血圧では20%、糖尿病では27%の死亡率増加が確認されたという。

  • 日中の座位時間

    日中の座位時間が2時間増えるごとに増加する死亡率の割合。脂質異常症、高血圧、糖尿病の生活習慣病のうち、糖尿病が27%と最も高い (出所:京都府立医科大学プレスリリースPDF)

生活習慣病を保有していない人では、日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡率は13%の増加だが、3つすべて保有している人では、42%も死亡率が高くなることが示された。

  • 日中の座位時間

    脂質異常症、高血圧、糖尿病の生活習慣病を保有数ごとの日中の座位時間が2時間増えるごとに増加する死亡率の割合。生活習慣病を3種類とも保有していると、42%と非常に高くなる (出所:京都府立医科大学プレスリリースPDF)

次に、身体活動量が増えると座位時間が長いことによる死亡のリスクを下げることができるか検討するために、余暇時間中の身体活動(METs:身体活動の強度基準)の量に応じて、4群に分けた解析が行われたが、余暇時間中の身体活動が増えても、座位時間による死亡率の減少効果はわずかであることが確認されたという。

  • 日中の座位時間

    身体活動量の群別における日中の座位時間が2時間増えるごとに増加する死亡率の割合。身体活動量ごとの群は、Q1が最小群、Q2が第2群、Q3が第3群、Q4が最大群。余暇時間に身体活動量を増やしても、効果は少なかった (出所:京都府立医科大学プレスリリースPDF)

現在、コロナ禍におけるテレワークの普及により、家庭内デスクワークの増加が予測される。在宅業務は、通勤時間が削減されるため、身体活動の低下に加え、座位時間の延長に繋がる可能性があるという。そのたけ研究チームでは、連続する座位時間を中断することの重要性も報告しており、こまめに動くことで連続した座位時間をなくす心がけを持つことが重要だとしている。