神戸大学は4月9日、子どもの体力向上が学力にプラスに作用するのかという研究において、科目の違いに注目し、体力向上が学業成績に与えるプラスの効果は、苦手科目に選択的に認められることが明らかになったと発表した。

同成果は、神戸大大学院 人間発達環境学研究科の石原暢助教、北海道教育大学(北教大)岩見沢校 保健体育講座の森田憲輝教授、北教大札幌校 保健体育講座の中島寿宏准教授、佐賀大学 教育学部 学校教育課程の山津幸司教授、北翔大学 大学院生涯スポーツ学部の沖田孝一教授、筑波大学の紙上敬太准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、「npj Science of Learning」に掲載された。

過去15年間にわたり、子どもの体力と学力の関係についての研究が盛んに行われているが、見解は一致しておらず、子どもの体力向上が学力にプラスに作用するのかどうか今もって結論に至っていない状況にあったという。そこで共同研究チームはその一因を解明するため、科目の違いに注目して今回の研究を実施した。

今回の研究では、469名の中学生を1年生から3年生まで2年間にわたって追跡し、体力(全身持久力)と苦手科目・得意科目の学業成績(国語・社会・数学・理科・英語の最低評定値と最高評定値)の変化の関係が調査された。体力以外の学業成績に影響を与える要因であるBMI、社会経済要因(両親の学歴と世帯収入)、放課後の勉強時間を同時に調査し、それらの影響を統計学的に取り除いた上での分析が行われた。

その結果、中学1年生から中学3年生にかけて体力が向上すると、苦手科目の学業成績が改善(主要5教科の最低評定値が向上)することが示されたという。一方で、体力の変化は得意科目の学業成績(主要5教科の最高評定値)の変化には関わっていないことが判明。これらの結果から、体力の向上をもたらすような習慣(運動部活動の練習など)は苦手科目の学業成績に好影響を与え、得意科目の学業成績には悪影響を与えないという推測がなされたとする。

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    体力の変化と苦手科目(左)・得意科目(右)の学業成績の変化の関係。縦軸は学業成績の変化、横軸は体力の変化が示されている(標準化した得点)。2年間で体力の向上が大きかった子どもほど苦手科目の成績(主要5教科の最低評定値)の向上が大きかったという(左)。一方、このような体力の変化との関係は、得意科目(主要5教科の最高評定値)では統計学的には認められなかった(右) (出所:神戸大Webサイト)

なお研究チームでは、今後、なぜ苦手科目に対してプラスの効果が選択的に認められたのか、その要因を明らかにしていくとしている。また、このような科目の違いに注目することによって、研究間の矛盾が解消されることが期待されるとしている。