ペットとして飼われるネコ「スコティッシュ・フォールド」は、生後数週間で耳が折れても、成長するにつれて立ち耳になる個体が存在し、こうした個体が折れ耳の個体と同じTRPV4遺伝子変異を持つことを、麻布大学などの研究グループが確認した。古くから折れ耳の個体は遺伝子に変異があり、折れ耳同士の交配は避けた方が良いとされている。「隠れ折れ耳」ともいえる個体の存在を認識し、どのように取り扱うべきか。動物愛護の観点から、遺伝子検査を勧めるなど、より良い繁殖管理環境を作りたいという。

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    耳の形に関する研究に参加したスコティッシュ・フォールド(アニコム損害保険提供)

麻布大学データサイエンスセンターの松本悠貴特任准教授(動物遺伝学)とアニコム先進医療研究所などの研究グループは、様々なネコの遺伝子から、病気のなりやすさなどを調べてきた。今回、ペットとして広く飼われているスコティッシュ・フォールドについて、その特徴である折れ耳と遺伝子の関係を調べることにした。

古い文献では、スコティッシュ・フォールドの耳が折れていると、骨瘤などが生じる骨軟骨異形成症の重症リスクが高い個体が生まれる可能性があるため、折れ耳同士の交配は避けた方が良いとされていた。遺伝子研究が進み、この折れ耳は「TRPV4遺伝子」という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになった。TRPV4遺伝子は、細胞内外のカルシウムを調整する役割を持ち、ネコの耳や関節の軟骨の発達に関与している。

だが、松本特任准教授がネコの獣医師やブリーダーに尋ねたところ、「外見は立ち耳でも、折れ耳の遺伝子を持つ個体がいる」「途中で耳の形が変わる個体がいる」と聞き、詳しく調べることにした。

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    耳の形が成長に伴って変化したスコティッシュ・フォールド(アニコム損害保険提供)

ペット保険を取り扱っているアニコム損害保険の契約者である飼い主に協力してもらい、114頭のスコティッシュ・フォールドについて、口腔内のDNAをぬぐって検査した。114頭の「顔写真」も提出してもらい、耳の形状を記録した。114頭の内訳は、オス63、メス51。

 その結果、TRPV4変異の遺伝子を片方の親からのみ受け継いだ個体(ヘテロ接合体)が55頭おり、その中でも7頭は子猫のときに折れ耳だったが、成長するにつれて立ち耳になっていることが判明した。松本特任准教授はこれらを「隠れ折れ耳」と名付けた。隠れ折れ耳群は、変異をもたない立ち耳のスコティッシュ・フォールドよりも耳介が小さかった。耳介が小さいこと自体になんらかの病的な影響が生じる可能性は低いと考えられるものの、現時点ではその影響は明らかでないため、今後調べていく必要があるという。

 そして、今回同時に行ったアンケートには「冬は折れ耳だが、夏になると立ち耳になる」という記載も。気温が関係している可能性もあり、今後の研究につなげたいとしている。

 なお、折れ耳同士の交配では、重度の骨軟骨異形成症になるおそれがある、TRPV4変異を2つ持つ個体(ホモ接合体)が生まれる可能性が高まる。骨軟骨異形成症は、ネコの骨や軟骨の発生異常により、関節変形や骨瘤などが生じ、痛みや歩行障害を引き起こす進行性の病気だ。ひどくなると歩行が不自由になったり、ジャンプできなくなったりする。

 さらに、個体によっては、関節の可動域が狭くなったり、痛みが伴うことで『スコ座り』という後ろ足を前に伸ばしてお尻で座る、人間が床に座るような姿勢がみられたりすることもある。スコ座りは「人がくつろいでいるようでかわいい」とSNSでもてはやされることもあるが、これはネコにとっては苦痛を感じている印でもある。

 松本特任准教授によると、イヌに比べ、ネコは動物病院で治療を受ける頻度が低く、データ集めに難航したという。「海外では、折れ耳のネコの繁殖を制限している国・地域があり、近年は飼育や売買まで規制対象とする動きもみられる。日本ではそのような取り決めはないが、今後、より多くのデータを調べて、ヘテロ接合体での骨軟骨異形成症のリスクを明らかにしていきたい」としている。

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    一連の研究を図にしたもの。骨軟骨異形成症のリスクは、スコティッシュ・フォールド以外の種類でも見られた(アニコム パフェ社提供)

近年、スコティッシュ・フォールドと、別の種類のネコであるアメリカン・カール、マンチカン、ミヌエットでもTRPV4遺伝子変異をもつ個体もあり、松本特任准教授は「遺伝子検査は昔より受けやすくなっている。繁殖を予定しているネコの耳の形に違和感を持ったら、遺伝子検査を受けることも検討した方が良いのではないか」と話した。

研究はアニコム先進医療研究所の助成を受けて行われた。成果は5月6日、米国の学術誌「アニマル ジェネティクス」に掲載され、麻布大学が6月1日に発表した。

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