アラブ首長国連邦(UAE)を構成するアブダビ首長国の政府系ファンド「Mubadala Investment」が、オーナーを務めるGLOBALFOUNDRIES(GF)の米国市場での新規株式公開(IPO)に向けた準備を開始したと米経済メディアBloombergが半導体業界の事情に詳しい関係者の話としてと4月8日付(米国時間)で報じている。

すでにMubadalaはGFの上場に関してアドバイスを行うコンサルタント会社の候補と協議を開始しており、GFの評価額は約200億ドル(約2兆2000億円)になる可能性があるという。

すでにGFのThomas Corfiled最高経営責任者(CEO)は、世界的な半導体不足による需要増に対応するため、14億ドルを投じて米国・ドイツ・シンガポールにある3つの工場の生産能力(90~12nmプロセス)を拡大する計画を表明している。それによると2021年の生産能力は前年比13%増、2022年は同20%増という見通しを示している。GFは、従来2022年末から2023年前半をめどにIPOを目指すとしていたが、2021年後半から2022年前半にIPOを早める可能性があると4月3日付のロイターが報じていた。

2018年に先端プロセスの開発と製造から撤退しているGF

かつてアブダビ首長国は、石油が枯渇した後の成長ビジネスを半導体と定めて、傘下の政府系開発投資会社を介す形で2009年にAMDの半導体製造施設(当時は米国とドイツ)を取得する形でGFを設立した。その後、GFはシンガポールのファウンドリChartered Semiconductor Manufacturingを買収したほか、一時は、中国成都にも工場を建設し、文字通りグローバルなファウンドリとなることを目指していた。

しかし、同社はIBMと先端プロセス開発に関するパートナーシップを結んでいたが、なかなか立ち上げることができず、2018年8月に7nmプロセスの開発を無期限で延期することを発表し、微細化競争から脱落することとなった。このため、不要になった微細化のための研究者をリストラしたり、ASIC事業部を独立会社として売却を行った経緯がある。

ちなみに著者は、2018年9月初旬にベルギーで開催された半導体洗浄技術の国際会議「UCPSS」の運営に参画していたが、GFの一連の先端プロセス開発からの撤退タイミングと重なった結果、GFの研究者による複数の講演がすべて無断でキャンセルされることとなり、会議運営に支障をきたしたことを覚えている(後に、発表者全員が学会での発表直前に突然の解雇を通告されたことが分かった)。

こうしたGFの先端プロセス開発からの撤退は、その前にAMDが製造委託先をGFからTSMCに切り替えたことも一因とされている。GFからTSMCへと鞍替えしたAMDのその後の躍進は多くの人が知るところである。

一方、半導体ビジネスに興味を失ったアブダビ資本は、何とかしてGFを手放すことを模索してきたが、買い手がつかないまま今日に至っており、ニューヨーク州アルバニー近郊のGFとしての最先端(14/12nmプロセス対応)工場であるFab 8の隣接地を買収するなどの動きをみせてはいるものの、実際のファブ増設に向けた計画は具体化していない。

なお、GFの多数の幹部が移籍してGFとも業務提携をしている、130/90nm以前のプロセスを扱うレガシーファウンドリであるミネソタ州のSkywater TechnologyもIPOの計画があることを明らかにしている。