半導体市場動向調査・コンサルティング企業のSemiconductor Intelligence(SI)は、半導体関連の市場調査会社各社ならびに世界半導体市場統計(WSTS)が年末年始に発表した2021年の半導体市場成長予測を踏まえ、自社の予測値を前年比14%増と発表した。

過去の傾向分析に基づく米Cowan LRA Modelによる同4.1%増(各社予測のうち最小値)から英Future Horizonsの同18%増(最高値)までばらつきはあるものの、おおむね11%~12%増の範囲で強いコンセンサスがあるように見える。また2月に入っての予測としては、IDCが同7.7%増としており、SIの同14%増という強気の予測とは対照的となっている。2021年が2月時点で半導体各社がファブをフル稼働させても供給不足となる状況となっており、これ以上の数量は伸びは期待できない一方で、半導体価格の値上げが相次いでいることに加え、下期に向けて巨額な設備投資が計画されていることから2桁成長は確実の見通しであり、下期に入れば、各社ともにさらなる上方修正の可能性もある。

  • 2021年半導体市場予測

    世界の主な市場動向調査会社が2020年年末/2021年年初に発表した2021年の半導体市場成長率予測(IC記載は非ICを除いたIC市場のみに予測) (出所:Semiconductor Intelligence)

2021年の半導体市場のドライバは何か?

2021年の半導体市場のドライバとしてSIはスマートフォン(スマホ)、PC、そして自動車の3分野を挙げている。IDCによると、スマホの市場規模が約1150億ドル、PCが約700億ドルとこの2つが2大市場だという。そのスマホの出荷台数は2020年に新型コロナの影響を受け、前年比11%減となったが、Gartnerによると、2021年は生産体制が通常に戻ることに加え、5Gモデルが需要を促進するため、同11%増と2桁の伸びが期待されるとしている。

また、自動車も2020年は生産台数を同17%減と落としたが、IHS Markitによると2021年は小型車の生産台数が同14%増と力強い回復が期待されるとしている。

ただし、PCの出荷台数については、2020年が同11%増と好調であったこともあり、IDCによると2021年は市場が元の動きに戻るため、同1%増程度の伸びに留まるとしている。

スマホ、PCとともに期待される自動車について、IHSによると車載半導体市場は約400億ドルと見積もられるという。スマホ1台あたり搭載される半導体の総額は100ドル未満、PC1台あたりでは約200ドルだが、車両1台あたり約500ドル程度と見られているほか、その搭載される半導体の種類もスマホやPCの場合はプロセッサやメモリなどが主だが、自動車の場合、コントローラ、メモリ、ミクスドシグナルIC、パワー半導体、センサなど幅広い種類が用いられることも魅力だという。

  • 2021年半導体市場予測

    2019年~2021年にかけての半導体市場の主なけん引役となったアプリケーションの出荷台数推移 (出所:Semiconductor Intelligence)

ただし、自動車市場は現在、多くの半導体が不足気味となっており、企業信用度調査・格付け機関のFitch Ratingsによると、不足が数か月にわたって自動車の生産を混乱させる可能性があると述べている一方で、2021年下半期には遅滞した分を補うペースで生産されることが見込まれるとしている。

2020年第4四半期、もっとも成長した半導体企業は?

SIは2月上旬までに発表した半導体各社の2020年第4四半期決算概要をまとめたところ、WSTS/SIAの同四半期の伸び率は前四半期比3.5%であったのに対し、多くの企業でそれを上回る伸びを示したという。特にQualcommは、前四半期比で32%増という大きな伸びを示した。次いでAMDが同16%増、NXPが同11%増と2桁成長を遂げたという。

Intel、Infineon Technologies、STMicroelectronicsの3社も1桁台後半の成長率を遂げたが、Micron Technologyが同4.7%減となったほかSamsung Electronics、SK Hynix、MediaTekの3社が現地通貨でマイナス成長となったという(ドル換算ではプラス成長)。

  • 2021年半導体市場予測

    2020年第4四半期の大手半導体14社の概況と2021年第1四半期に関するガイダンス (出所:Semiconductor Intelligence)

なお、2021年第1四半期の各社の業績見通しについてだが、公表されている範囲ではMicron、MediaTek、Infineon、NXPが前四半期比でプラス成長と予測する一方で、Intel、Qualcomm、Texas Instruments、AMD、STMicroelectronicsが主に通常の季節的要因を背景にマイナス成長の予測をだしている。