TSMCは10月15日、2020年9月30日に終了した2020年第3四半期(7~9月期)の連結売上高が過去最高となる3564.3億NTドルに達し、純利益も過去最高を更新する1373.1億NTドルとなったことを発表した。

事前のアナリスト予測を上回る今回の結果は、先般発表されたApple iPhoneの新モデルに搭載されるA14プロセッサの5nmプロセスによる大量生産に加えて、米国による制裁前にHuawei/HiSilicoから近く発売される予定のMate40向けKirin9000プロセッサを駆け込み受注したためだと見られている。

第3四半期の売上高は前年同期比で21.6%増、前四半期比でも14.7%増となり、純利益も前年同期比35.9%増、前四半期比13.6%増と大きく伸びた。また、5nmデバイスの売り上げが初めて計上され、総売上高の8%を占めたことが明らかとなった。7nmと16nmがそれぞれ35%と18%を占めており、同社が定義する先端プロセスは総売り上げの61%を占めるに至っている。

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    TSMCが公表した2020年第3四半期の業績概要 (出所:TSMC)

2020年第4四半期の業績予測も好調を維持の見通し

TSMCは、現在の事業状況に基づいて、2020年第4四半期(10~12月期)の業績を以下のように予想している。

  • 収益は124億ドルから127億ドルの間と予想
  • 粗利益率は51.5%から53.5%の間になると予想
  • 営業利益率は40.5%から42.5%の間になると予想

これ予想の結果、通期売上高は従来予測の20%超から30%越に上方修正されたことが見て取れる。2020年の設備投資は約170億ドルの見通し(従来予想レンジの上限値)である。TSMCは5G対応スマートフォンやサーバ用半導体需要の高まりを見込んで設備投資や研究投資を最大限に強化するという。

TSMCのバイスプレジデントである黄仁昭(ウェンデルファン)最高財務責任者(CFO)氏は「2020年第4四半期は、5Gスマホの発売とHPC関連アプリケーションに牽引される形で5nm製品に対する需要が強く維持され、連続的な成長につながることを期待している。その結果として、2020年通期の売上高は前年比で30%以上の成長が見込める」と述べている。

TSMCには、世界中の半導体企業から、7/5nm製品の生産委託が殺到しており、すでにその売り上げは全体の4割を超えるまでに至っているという。そのため、EUV露光装置の増設が必至の状況であり、年間最大40台しか生産能力のないASMLへ追加注文しているようだ。これに危機感を抱いたSamsungの李在鎔 副会長は、急遽10月9日にASML本社を訪問し、14日に帰国し、「EUV露光装置のSamsungへの供給拡大に向けた協議をASMLトップとしてきた」ことを明らかにしたが詳細は明かさなかった。露光装置業界関係者の話では、ASMLは2021年のEUV露光装置の生産能力を45-50台程度まで増やす見込みだというがこれでも需要を賄えない見込みで、TSMCとSamsungの(状況が改善すればIntelも参戦し)奪い合いが続く見込みである。