半導体ナノテク研究機関のベルギーimecは、次世代の高精度・低消費電力の超広帯域無線(UWB)技術を用いたセキュアプロキシミティ研究プログラムにハードウェアとソフトウェアの専門家を集め、消費電力を従来の1/10まで低下させつつ、厳しい環境下で10cm以下の測距精度を実現した次世代UWB技術を開発し、半導体チップとして実現したと発表した。

UWBはクルマのキーレスによるドアの開閉などといったセキュアなアクセスやAR/VR、ロボティクスなどにおけるマイクロローカリゼーション(超精密位置測定)アプリケーションへの道を開く技術として期待されているが、従来のUWB技術では消費電力やチップサイズなどといった課題が距離測定ソリューションへの導入の障壁となっていた。今回の技術成果は、そうした課題を解決するもので、3つのレシーバーを含むトランシーバー全体を1mm2未満の面積に収容したほか、消費電力も従来技術と比べて1/10相当となる4mW/20mW(Tc/Rx)未満を実現したとしている。

また、同チップは、Car Connectivity Consortium(CCC)やFine Ranging(FiRa)などがサポートしているIEEE 802.15.4z規格に準拠しているという。

さらに、これらのハードウェア開発を補完するIDLab(ゲント大学のimec研究グループ)の研究者たちにより、工場や倉庫、金属の障害物が多い建物といった困難な環境におけるUWBを用いた距離測定性能を向上させる拡張機能として、ネットワークの物理層パラメーターのアダプティブチューニングを可能にする機械学習対応機能が考案されており、こうした技術を活用することで、過酷な環境でも10cm以下の測定精度を実証済みだという。

なお、こうした技術を活用することで、小型かつプライバシーを意識したデバイスを構築することも可能になるとのことで、幅広い分野での利用が期待できるようになるとimecでは説明している。

  • imec

    imecの次世代高精度低消費電力UWB距離測定チップ (出所:imec)