富士通は中堅中小企業向けERP(Enterprise Resource Planning)ソリューション「GLOVIA(グロービア)」を刷新し「GLOVIA One」として、2026年4月22日から順次提供を開始する。これまで提供してきた「GLOVIA SUMMIT」や「GLOVIA iZ(アイズ)」「GLOVIA きらら」を統合するとともに、共通プラットフォーム「Uvance Platform」上で稼働させ、Uvanceのオファリングの1つとして提供していく。

中堅中小企業向けERP「GLOVIA One」誕生、統合で何が変わるのか

富士通 執行役員常務 エンタープライズ事業担当の古濱淑子氏は「GLOVIA Oneは、AI時代のERPソリューションとして再定義したものになる。新たにUvance Platformを基盤に採用し、進化したことでAIの活用やコンポーザブルERPとして活用できる。海外で生まれたERPの画一的な業務テンプレートに合わせにくい日本企業に最適な提案を行う。日本における中堅中小の民需企業を牽引する新たなERPになる」と自信をのぞかせる。

  • 富士通 執行役員常務 エンタープライズ事業担当の古濱淑子氏

    富士通 執行役員常務 エンタープライズ事業担当の古濱淑子氏

2028年度までに、約700社への導入を目指しており、そのうち2~3割を新規ユーザーとする意欲的な計画を打ち出している。

GLOVIAシリーズは、1975年に同社のオフコン「Kシリーズ」向けの財務ソフトウェア「CAPSEL」が源流となり、1997年にはオープン化の流れを捉えながら、GLOVIAブランドでの提供を開始。

市場環境の変化にあわせて、機能拡張や製品ラインアップを拡大してきた経緯がある。50年以上にわたって、日本の中堅中小企業が持つ固有のニーズに対応。現在は、約2000社で稼働している。ただ、対象とする企業規模にあわせて「似て非なる」製品が林立していたことも確かであり、GLOVIA Oneでは、この課題を解決する狙いもある。

  • 「GLOVIA」の変遷

    「GLOVIA」の変遷

また、富士通グループの民需向け準大手および中堅、中小企業向けビジネスはこれまで富士通Japanが担当していたが、2026年4月1日付で富士通へと移管しており、この点でも今回のGLOVIA Oneによる製品統合は、開発からデリバリーまでの一本化へとつながり、GLOVIAビジネスを加速するうえでも最適化したものになるといえる。同社の中堅中小企業向け民需ビジネスの新体制において、中核的ソリューションとなるのは明らかだ。

新たに刷新したGLOVIA Oneは会計、人事給与、販売、生産の4つの機能を提供し、年商30億円から1000億円規模の日本企業を対象にしている。日本特有の業務プロセスや商習慣、法制度、将来のビジネス成長や変化に柔軟に対応できる点が特徴となっている。

同製品は段階的に進化させることを可能とし、APIで他社ソリューションと容易に連携するアーキテクチャに変更したことで、アドオン開発を最低限に抑えながら、最適なソリューションを選択できるようにした。また、AIエージェントによりデータを統合し、可視化する機能を提供することで、経営や現場の意思決定を支援するという。

富士通 エンタープライズ事業ソリューションアーキテクト事業本部長の中川昌彦氏は「GLOVIA Oneでは、これまでのGLOVIAシリーズを、1つのブランドに統合するとともに、機能や稼働資産も統合。これによって、ひとつのラインアップで、様々な企業規模に対応することになる。また、従来は、すべての機能を自前で揃えることにこだわってきたが、パートナーとの連携、エコシステムの構築により、コンポーザブルERPとして提供することになる。継続的に成長する製品」と位置づけている。

  • 富士通 エンタープライズ事業ソリューションアーキテクト事業本部長の中川昌彦氏

    富士通 エンタープライズ事業ソリューションアーキテクト事業本部長の中川昌彦氏

GLOVIAシリーズで利用しているユーザー資産はそのまま活用できるようにする一方で、会計や人事給与などを、コンポーザブルパターンとして業種や企業規模ごとに用意する。

「コンポーザブルパターンは、現在、整理をしている段階であり、お客さまやパートナーと話をしながら、それぞれの業種や規模ごとに2~3パターンに集約していく。増やしすぎるとアドオンの温床になるので、しっかりと選定をしていく」(中川氏)

GLOVIA Oneは、GLOVIAシリーズの長年の歴史においても、大きな変革点となる。2024年度下期から開発に着手したGLOVIA Oneは、Uvanceの枠組みのなかで提供するとともに、新たにUvance Platformを採用。そのうえで、GLOVIA SUMMITやGLOVIA iZで提供してきた機能をベストプラクティスとして組み合わせ、新たな機能なども追加した。

たとえば、会計については7~8割は同じ資産を活用し、これらの機能はGLOVIA SUMMITを継承。販売管理は、GLOVIA iZとGLOVIA きららで同じ機能を持っていたものの、それぞれ異なっていたプラットフォームを、Uvance Platformに統合した。

  • これまでのGLOVIAシリーズを統合し、段階的な拡張を前提としてコンポーザブルERPとして提供する

    これまでのGLOVIAシリーズを統合し、段階的な拡張を前提としてコンポーザブルERPとして提供する

中川氏は「統合するうえでは、製品ごとに異なっていた機能や資産を最適な形で活用し、生産性を高めることができるプラットフォームに載せることを目指した。Uvance Platformを基盤とすることで、この目標を達成することができた。また、高いセキュリティと安定した運用管理、効率化も実現できる。Clean Core with API & エコシステムにより、ビジネスの共進化を図れる」とのことだ。

なお、GLOVIA OneはMicrosoft Azureを活用したマルチテナント型SaaS(Software as a Service)として提供することになる。中川氏は「Uvance Platformは基盤はSaaSだが、API連携を前提にクラウド分散にも対応するなど、マルチクラウド化を進めていくことになる。会計などのベースモジュールは、Azureで提供していたが周辺につながるものは、AWS(Amazon Web Services)、Google Cloud、OCI(Oracle Alloy)などにも対応していきたい」と語った。

「AI×コンポーザブルERP」で差別化するGLOVIA Oneの戦略

GLOVIA Oneで掲げたのは「INSIGHT(インサイト)」「FIT TO JAPAN(フィットトゥージャパン)」「PARTNERSHIP(パートナーシップ)」の3つのコンセプトだ。

  • 「GLOVIA One」における3つのコンセプト

    「GLOVIA One」における3つのコンセプト

INSIGHT:AIエージェントとChat BIで意思決定を高度化

INSIGHTでは会計や人事給与、販売、生産に関するデータのほか、連携する業務データを、データレイクに集約するとともに、AIエージェントとの対話により、業務データや経営データの分析・示唆を提供するビジネスインテリジェンス機能「Chat BI」を用意。経営や現場の判断に活かすことができる。

中川氏は「業務データを多面的に分析し、意思決定を支援する機能の提供により、分析だけでなく、聞けば答え、示唆を返す存在を目指す。これまでは、分析帳票などはアドオンで開発したり、BIツールを活用してもらったりという形であったが、ここにChat BIを活用することになる。すでにプロトタイプが完成している」という。

Chat BIに「為替が5%円安になった場合の営業利益への影響は?」といった質問を自然言語で行うことで、図表などを含めて、適切なアウトプットが得られる。同氏は「バックオフィス業務のUIは、今後AIに置き換わっていくことになるだろう。AIがまとめたデータの整合性や正確性について疑問があれば、別のAIがそれをチェックし、人に確認を促すといった使い方も想定している。これに関するプロトタイプも開発しているところだ」と述べている。

また、2026年度中にUvance Platformに各種データを集約する仕組みを提供するほか、パートナーが提供するコンポーザブルソリューションのデータも活用できるようにする。AI活用を促進する上での基盤が整うことになる。

Uvance Platformの採用により、富士通独自のエンタープライズLLMである「Takane」の活用も促進されることになるが、中川氏は「特定のLLM(大規模言語モデル)に利用を限定するものではない。また、Uvance Platformは、パートナーにも使ってもらい、そこでAI活用の提案を加速したり、新たなAIサービスを提供したりといったことにもつなげたい」とも述べた。

FIT TO JAPAN:Clean Coreを維持しながら日本企業に適合

FIT TO JAPANについては、日本の中堅中小企業が現場で求めている機能やパートナーが得意とする機能を「日本固有の価値」とし、それを現場にフィットさせながら進化し続けるERPを目指す。つまり、FIT TO JAPANは個社要件に対して、最適なソリューションを組み合わせる一方、システム標準にあわせつつ、アドオン開発を最低限に抑えるアプローチとなる。

Fit to Standardでは対応できない状況にある中堅中小企業に対する提案でもあり、富士通ではグローバル標準を追求する中堅企業に対しては、SAPを提案するといった選択肢を用意している。

中川氏は「従来、お客さまのビジネス成長や法改正などの要件にあわせて、アドオンやカスタマイズを行うことが多かった。これを完全に廃止するわけではない。GLOVIA Oneは、Fit to Standardによる業務の画一化ではなく、Clean Coreを前提とし、富士通が蓄積してきた日本企業の現場におけるさまざまな改善や工夫、業務知見などを組み合わせ、製品の標準機能と共存させている。現場に寄り添うことは重要ではあるものの、コンセプトとしてはClean Coreが最も重要な要素だと考えている。資産をClean Coreとして守りつつ、バリエーションを持ったテンプレートを用意し、エコシステムでさまざまなニーズに対応していく」と力を込める。

GLOVIA Oneでは業務ルールや設計思想、設定手順を、標準化および言語化し、その上で、標準機能を保つことにより、その後のアップグレードや機能の更新を自動化できるアーキテクチャーを採用しているという。これにより、顧客ごとの業務に最適な機能を提供し、業務変更が強要されないことを目指す。

また、富士通自身も開発や導入、保守といったオペレーションに、AIエージェントを組み込むことで、標準機能を迅速に、頻繁にリリースし続けることで、日本特有の商習慣や税制改正に対応する体制の構築を図る。

PARTNERSHIP:エコシステムで拡張する日本発ERP

PARTNERSHIPでは多様な知見を集積したコミュニティを形成し、製品やサービスを基盤にしたコンポーザブルな組み合わせを実現。業界や業務知見を、AIエージェントや機能として、エコシステム全体で実装するほか、その価値をコミュニティで共有し、展開、蓄積していく考えを示している。

機能やデータ、外部サービスをAPIで組み合わせるコンポーザブルなアーキテクチャをオープンに共有することで、業務のコンテキストを理解したAIエージェントが判断から実行までをつなぎ、顧客ごとに最適化した業務プロセスを自律的に動かすことも視野に入れている。

中川氏「たとえば、販売管理は業種が幅広く、最適化するためにカスタマイズで対応するという部分が多かったが、今後は富士通の仕組みが合わないようであれば、そこにパートナーが得意する販売管理と組み合わせる提案ができる。こうした共創の積み重ねでERPの在り方そのものを更新し続けることが可能。業界の枠を超えて、お客さま同士がつながり、サプライチェーン全体に広げていくことも考えている。これは、Uvanceで目指している方向性と同じだ。日本発の日本のためのERPエコシステムを形成する」とした。

また、古濱氏は「コミュニティは、お客さま自らが進化する場にもしていきたい。GLOVIA Oneで提供する新たなテクノロジーやソリューションの活用を提案したり、事例の共有なども行ったりしていく」と述べた。

将来的には、AIエージェントがさまざまなコンポーザブルソリューションと連携しながら、自律的に業務を運用していく形へと発展させていく計画だ。

「共進化」を掲げるGLOVIA One、ERPの将来像をどう描くか

GLOVIA Oneでは、新たに「共進化」というビジョンを打ち出している。現場の変化と経営の高度化が循環し、さまざまな企業が起こすイノベーションを継続して取り込むことで、進化が続く状態を共進化としている。

中川氏は「共進化とは、日本の地域や社会で生まれたお客さまの事業に寄り添いながら、ともに進化していくことを指す。日本の多くの企業が人材不足やデジタル格差、組織の硬直化などの課題に直面し、変革が進められないという状況にある。できれば使い慣れたERPをリプレースせずに使い続けながら、変革に取り組みたいという声もある。GLOVIA自体が、常に進化しつづけるだけでなく、あらゆるステークホルダーをつなぎ合わせて、共進化ネットワークを広げていくことで、柔軟性を持ったツールへと進化させる」と今後の展望を語っている。

  • 「GLOVIA One」の新ビジョンは「共進化」だ

    「GLOVIA One」の新ビジョンは「共進化」だ

販売戦略については、これまで同様に、GLOVIAシリーズ全体の約7割を占めるパートナー販売を重視することを明言。さらに、API連携を行ったり、コンポーザブルソリューションを提供したりするパートナーが、GLOVIA Oneを販売する新たな仕組みも検討していくという。

また、中堅企業に対しては、富士通のコンサルティングサービス「Uvance Wayfinders」との連携も視野に入れており、上位レイヤーからの提案や、小売業向けの「Uvance for Retail」をはじめとした業種ごとに用意されたUvanceオファリングとの連携提案も進める考えだ。