韓国では、日本の半導体・ディスプレイ素材の対韓輸出規制強化に対処するため、2019年12月末に韓国の国会で成立した「素材・部品・装備(装置や設備)産業の競争力強化に向けた特別措置法」が2020年4月1日より施行された。

同特別措置法(特措法)は2001年制定の素材・部品専門企業の育成に向けた特別法を全面的に見直したもので、育成対象に素材・部品のほか製造装置を加え、素材・部品・装備産業全般の競争力を強化することを目的にしている。これらの産業分野で、いわば脱日本を目指すためのさまざまな施策を順次実行し、韓国企業(韓国に誘致した外資系企業を含む)の競争力強化を支援していこうとしている。

文大統領らが、フッ化ポリイミド工場を視察

韓国で同特措法が施行された4月1日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源部長官(日本の経済産業省大臣に相当)、朴映宣(パク・ヨンソン)中小ベンチャー企業部長官(日本の中小企業庁長官に相当)らと、新型コロナウイルスの感染が集団発生している大邱広域市近郊の亀尾産業団地を訪問し、折り畳み式スマートフォンのディスプレイ製造に必須なフッ化ポリイミドの国産化を果たしたColon Industry亀尾工場を視察し、成長官は、素材・部品・装備で確実に脱日本を実現しつつあると語ったという。

半導体用高純度フッ化水素に関しては、すでに韓Soulbrainはじめ数社が2019年秋から量産を始めており、EUVリソグラフィに関しては、米DuPontが韓国に製造ラインの建設を始めているほか、日本企業もそうした動きに対抗することを目的に韓国での製造を検討しているという。ディスプレイ用フッ化ポリイミドはColon IndustryのほかSKグループの化学材料メーカーSKCも量産を始めており、日本から輸入しなくても韓国内で調達できる体制が整ってきている。

視察後、文大統領一行は、同団地で新型コロナウイルス問題の対応に当たる企業関係者らと懇談を行い、「亀尾国家産業団地は新型コロナウイルスの被害を克服した模範事例である。産業団地内で多数の感染者が発生し、操業中止や原材料・部品需給への影響があったが、これを克服しつつある」と述べたという。韓国政府のスポークスマンによれば、「今回の政府トップの視察は、日本の輸出規制による素材・部品の危機を克服した2019年の経験を生かして政府と企業がともに新型コロナウイルスの危機を必ず克服するという強い意志を込めたものである」とのことである。

韓国は新型コロナウイルスの感染拡大を防げているのか

なお、文大統領らが視察した亀尾市では、日本とは異なり希望者全員がドライブスルーなどで容易にPCR検査を受けられることから、すでに市内で6000名がPCR検査を受け、今までに67名が陽性判明、うち38名が退院している。死亡者は出ておらず、市当局は新型コロナウイルスの感染も収束の方向にあるとの見方をしている。すでにSK Holdingsも傘下のSKグループ各社の在宅勤務をやめ、時差出勤に切り替えたという。亀尾国家工業団地では、Samsung、LG Display、SK Siltron、MagnaChipはじめとする多数の製造業において工場勤務の従業員は平常通りの出社となっており、操業を継続している。自宅待機となっていた技術者たちも、大邱在住者を除いて出社が可能になっているという。