オートデスクと日本設計は11月21日、2014年に開始した戦略的技術パートナーシップ、そして2015年に締結した業務包括契約(EBA)を経て、今般、新たな3年間に向けたEBAを締結し、新たなフェーズとしてスタートを切ったことを明らかにした。

  • ルー・グレスパン氏と千鳥義典氏

    握手を交わすオートデスクのルー・グレスパン氏(左)と日本設計の千鳥義典氏(右)

日本設計の代表取締役社長である千鳥義典氏は、これまでの両社の取り組みを振り返り、「オートデスクとのEBAにより、さまざまなBIMの思考、新たなチャレンジに取り組むことができたといえる」とその業務における成果を説明するほか、「海外のBIM先進事務所との意見交換や、日本設計のスタッフを海外に派遣する際の支援、オートデスク内のトップクラスの技術者たちとの直接的な交流による日本で使いやすいBIMの活用に向けた検討なども進めてきた」とソフト面での大きな成果があったとする。

  • 日本設計とオートデスクの協業の目的

    日本設計とオートデスクの協業の目的 (出所:日本設計/オートデスク発表資料より抜粋)

一方のオートデスクとしても、「日本はグローバル3位の規模を持つ重要な市場。BIMに関しては、シンガポールや英国などが先行しているが、日本設計の取り組みが日本市場におけるパイオニア的な取り組みである」(オートデスク アジアパシフィックアカウント営業部 シニアディレクターのルー・グレスパン氏)とし、2社間のパートナーシップが日本でのBIMの普及に向けた推進力となっていることを強調した。

新たなパートナーシップが目指すBIMの姿

新たなパートナーシップでは、日本設計側から「建物の高品質化・高性能化」、「BIMのワークフローの検討」、「ビッグデータの活用」という3つのテーマで進めていくことが語られた。

1つ目の建物の高品質化・高性能化については、「建物の高品質化というのは、建物の規模が大きく、複合化して複雑化していく現在を踏まえると、さまざまなBIMを活用して、それらに整合性を持たせて活用していく必要があるということ。一方の高性能化は、環境や健康に対する指標などに対して、さまざまなシミュレーションを行なう必要があるが、そのための高度化などを図っていく」(千鳥氏)といった取り組みとなるという。

  • 建物の高品質化・高性能化のイメージ

    建物の高品質化・高性能化のイメージ (出所:日本設計/オートデスク発表資料より抜粋)

また2つ目のBIMのワークフローの検討については、「企画から基本・実施設計、積算、施工、維持管理、FM戦略、長期計画までの一連のワーフフローを1つの流れに乗せるためにはどうすれば良いのか、という取り組み」であるとする。現状の日本では概略的なガイドラインしかないなどの課題があり、そうしたガイドラインや実効計画書の雛形の標準化などを策定していく必要性があり、その実現に向けた取り組みを進めていくとする。

  • ワークフローの整備に向けたイメージ

    ワークフローの整備に向けたイメージ (出所:日本設計/オートデスク発表資料より抜粋)

そして3つ目となるビッグデータの活用については、「建築分野でもビッグデータを活用していく時代に入ってくる」との見解を示し、設計データと建築にまつわる社会的なさまざまな側面を交えたデータや、過去の建築に関するデータなどを組み合わせたアルゴリズムの開発・活用などを図っていきたいとするほか、オートデスクのWebサービスAPI「Autodesk Forge」を活用することで、共通の開発プラットフォームとしてデータをクラウドにつなげることで、垣根を越えたデータ活用が可能になるとした。

  • ビッグデータの活用に向けたイメージ

    ビッグデータの活用に向けたイメージ (出所:日本設計/オートデスク発表資料より抜粋)

グレスパン氏も、日本設計のこうした方向性に対し、「こうした課題の解決に向け2社で協力して進めていく」と2社の関係性を強調するほか、「BIMへの取り組みは業界全体で進めていく必要がある」とし、オートデスクと日本設計が先頭を切って、どうすることが日本でBIMを活用するために最適な方法であるのかを業界全体を巻き込む形で話を進めていくことで、日本でのBIM活用に向けた推進役となっていければとしていた。