東京大学(東大)とクロスアビリティは11月30日、空間に分布する物理量を3Dプリンタで可視化する技術を開発したと発表した。

同成果は、東京大学物性研究所附属計算物質科学研究センター 山崎淳技術専門職員、クロスアビリティ 長代新治氏らの研究グループによるもので、11月30日~12月2日に大阪大学で開催される「第30回分子シミュレーション討論会」にて発表される。

同研究グループは今回、分子を構成する原子間の結合を担う電子密度分布(電子雲)のように、空間に分散する物理量を3Dプリンタで出力可能なデータに変換するプログラムを開発。インクジェット型の3Dプリンタを用いて、電子雲を透明プラスティック中に描写することを可能とした。同技術は、分子以外に雲、銀河、建物や車の周囲の気流などを描写することも可能であるという。

同研究グループは、同技術を用いて作製された分子模型により、分子中の電子状態の理解が深まり、電子が関与する新機能分子の開発等に役立てることが可能になるとしているほか、教育ツールとして利用することで、物質の構造や機能と電子密度の関連の理解を深めることが可能になると説明している。

たとえば、フラーレン(C60)の場合、分子シミュレーションによりフラーレン分子の電子密度分布などを計算し、クロスアビリティの分子モデリング・可視化ソフトウェア「Winmostar」を用いて、計算結果のデータを3次元グリッド中の物理量を定義するためのフォーマットであるcubeファイルに変換。cubeファイルを、3Dプリンタ出力に必要なSTLファイルに直接変換する。左がフラーレンの電子雲シミュレーション結果で、右が3Dプリンタで透明樹脂中に形成したフラーレンの電子雲を描写した分子模型(5cm角)。いずれも上半分は電子雲だけ、下半分は従来のボールスティックタイプの分子模型となっている