Alteraは既報の通り、11月2日(米国時間)に同社の開発ソフトウェア「Quartus II」の後継となる新開発ソフト「Quartus Prime」を発表したが、これに併せて同社の日本法人である日本アルテラが、同ソフトについての会見を開催し、同ソフトの特徴などの説明を行った。

Quartus Primeの最大の特徴はQuartus IIの最終版であるv15.0向けにも提供されていた階層型データベース(DB)生成エンジン「Spectra-Q」を採用したこと。会見でQuartus Primeの説明を行ったAlteraのManager, Software and DSP Product MarketingであるAlbert Chang氏は、「AlteraのFPGA製品に搭載されているロジックエレメント(LE)の容量をはじめ、さまざまな機能が拡張を続けており、1チップで複雑なデザインを設計することが可能となってきた。しかし、同時に設計課題も複雑になってきており、そうした背景を踏まえ、開発容易化を実現する新たなソフトウェアが必要であった」と、Quartus Primeの開発経緯を語るが、その開発は大きく、以下の3つの分野にフォーカスする形で進められてきたとする。

  • より早いデザイン・エントリ
  • より短いコンパイル時間
  • より少ないデザイン・イタレーション

FPGAの機能や性能は拡大を続けており、それに伴って開発の課題も複雑化してきている。それを解決するためにSpectra-Qエンジンが開発された

Quartus Primeのユーザーインタフェース(UI)は、実はQuartus IIとほぼ変わっておらず、これまでQuartus IIを利用していたユーザーは同じように利用することが可能だという。それもそのはず、「Quartus Prime」は元々、「Quartus II v15.1」として開発が進められてきたものとのことで、どういった経緯かの詳細は明らかにされなかったが、20nmプロセス以降のデバイスを本格的に展開していく、といった意味合いなどを込めて名称が変更されたようだ。

実際、提供エディションは、従来の「Web Edition」と「Subscription Edtion」の2つから、Web Editionに置き換わる「Light Edition(LE)」、Subscription Edtionに置き換わる「Standard Edition(SE)」に加え、最上位版として「Pro Edition(PE)」が提供されており、PEのみArria 10以降のデバイスのみを対象としたもので、Spectra-Qのさまざまな機能をフル活用できるようになっているという。

Quartus Primeは20nmプロセス以降の製品の開発容易化を目指して開発が進められてきたソフトウェア。ただし、これまでのQuartus IIの発展版という位置づけのため、提供エディションによっては、28nmプロセスより以前の製品の開発に最適化が図られているものもあり、どのエディションを使うかは、自分が扱うデバイスと相談することとなる

Spectra-Qそのものの機能は、同社が5月に発表したものと基本的に変更はないが、簡単に説明すると、新たな合成アルゴリズムを採用し、ハイブリッド配置を可能とした「Hybrid Placer」、規則チェック機能付きのリアルタイムI/O配置機能「BluePrint Platform Designer」、再コンパイルする必要のあるIPのみを選択してコンパイル実行などを可能とする「Rapid Recompile」、そしてSystem VerilogやVHDL 2008といったさまざまな開発言語への対応などが提供される。

Spectra-Qにより提供される新機能各種。これらを活用することで、20nmプロセス以降の大規模なFPGAであっても、開発の簡素化や高速化を図ることが可能となった

ちなみに同社では、こうした機能を活用するだけで平均7%のパフォーマンス改善が可能で、さらに最適化を行うと、平均で30%のパフォーマンス向上が可能と説明している。

Arria 10をQuartus Primeを用いて開発した場合、前バージョンで設計する場合に比べて、I/O設計は10倍高速になり、コンパイル速度も最大4倍高速化できるとするほか、コア性能も配置アルゴリズムの改善により1つ上のグレード並に向上することができるようになるという

なお、LEならびにSEはすでに提供を開始しているが、PEについては現状、β版での提供となっているため、利用したい場合は、個別に同社担当者に問い合わせを行う必要があるので注意が必要だ。ただし、3エディションともに30日間の無償トライアルは利用可能なため、このトライアルを利用して、具体的な使い勝手などを確認することが可能となっている。