東京工業大学地球生命研究所(ELSI)は8月7日、米ジョン・テンプルトン財団(テンプルトン財団)から総額550万ドル(約6億7千万円)の研究資金を獲得し、同資金を使用する「EON(ELSI ORGINS NETWORK)プロジェクト」を開始すると発表した。

ELSIは、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)拠点として設立された研究機関で、生命誕生時の初期地球の環境の研究をもとに、生命誕生の謎を解明することを目的としている。同研究所の広瀬敬 所長によれば「初期の地球環境と生命の起源を同時に研究している点がユニークだとして(テンプルトン財団から)高い評価を受けた」ことに加え、「WPIプロジェクトして政府から10年間資金提供を受けることが決まっていること」などが、資金獲得につながったという。

ELSIの概要

ELSIの広瀬敬 所長

ELSIがスタートさせる「EONプロジェクト」は、「生命はどのように生まれたのか」「生命の存在は宇宙でどれほど普遍的か」「生命の起源を説明する基本原理は何か」という3つの科学目標を中心に国際的な共同研究を推進する取り組み。具体的には、世界各地から研究者を受け入れ、その研究者を介して他の研究者とつながることで、共同研究が広がっていくようなネットワークを構築するという。こうしたネットワークの重要性を広瀬所長は「『生命の起源』と言っても、(初期地球の)環境の研究、化学的な研究、生命の誕生から初期進化など、(テーマが)非常に幅広い。色々な知識が必要となり、色々な人が集まって研究することが重要」と説明。研究者の雇用や招聘プログラムに加え、研究者が交流できるようなウェブサイトの開設、革新的なプロジェクトへの研究助成などを実施し、「生命の起源」の研究を進める上でELSIがハブ的な役割を担っていくとした。

「EONプロジェクト」の概要。550万ドルという寄付額は、テンプルトン財団としては最大規模とのこと。

今回のELSI以外で、日本の大学が海外から多額の研究資金を獲得した例としては、東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)が2012年に750万ドルの寄付を受けているが、ELSIやKavli IPMUのようなケースはまだ少ないのが現状だ。ELSIは今後、海外資金の獲得に向けて積極的に取り組む姿勢を打ち出しており、研究成果はもちろん、他の国内研究機関にとって運営面でモデルケースとなるかどうかという点も注目される。