理化学研究所(理研)は1月28日、コヒーレントX線回折イメージング(CXDI)法による細胞など生体試料のイメージングの分解能と信頼性を向上できる測定・解析法を開発し、計算機実験により実証したと発表した。

同成果は、同所 放射光科学総合研究センター 米倉生体機構研究室の高山裕貴基礎科学特別研究員、米倉功治准主任研究員、慶應義塾大学の中迫雅由教授、苙口友隆助教らによるもの。詳細は、英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

CXDI法は、ミクロンからサブミクロンサイズの結晶化が困難な試料の内部構造を、電子顕微鏡のように試料を薄片にスライスすることなく、光学顕微鏡より高い分解能で観察可能なイメージング手法である。現在、細胞など生体試料の構造解析への応用が進められ、非常に強力なコヒーレントX線光源であるX線自由電子レーザ(XFEL)の利用により、分解能30~60nmでのイメージングが可能となっている。

しかし、X線回折能の低い生体試料からは弱いシグナルしか得ることができず、分解能をさらに向上させることができなかった。加えて、観測される回折パターンは実験上の制約から回折角が小さな領域のデータは測定できないため、結像に用いる従来の計算アルゴリズムでは、正しい像を再生できない場合があることが問題となっていた。

今回研究グループは、これらの問題を同時に解決すべく、生体試料と同時にX線回折能の高い多数の金粒子をイメージングするという新たな測定・解析法を考案。両者から回折されたX線が干渉することで、生体試料の回折シグナルは測定できるレベルに押し上げられる。また、金粒子の比較的高いシグナルの回折パターンから得られた金粒子の配置の情報を結像アルゴリズムに与えることで、より信頼度の高い試料像を再生する。そして、理研のXFEL施設「SACLA」での実験に基づいた計算機実験の結果、同手法によって分解能が従来よりも2倍以上向上し、試料周縁部の低コントラスト構造も明瞭に観察できることが示されたとしている。

研究グループは、同手法が実用化されれば、細胞や機能性材料がより精緻に可視化され、機能原理の解明に貢献することが期待できるとコメントしている。

新手法の試料モデルと計算機実験で得られた回折パターン。新手法では、測定対象試料(バクテリア)の周囲に金粒子を多数散布した試料(a)を作製し、XFELを照射する。この試料から計算される回折パターン(b、右)では、バクテリアのみ(b、左)に比べて2倍以上の広い回折角で強強度の回折パターンが観測された。回折パターンは端で約14nmの構造情報を有している。(c)は回折パターン赤線上の回折強度をプロットしたもので、全回折シグナルを青の実線、金粒子由来を黄の破線、バクテリア由来を緑の実線、両者の干渉によるシグナル(絶対値)を赤の実線で示した。干渉効果によりバクテリアの回折シグナルがおよそ1桁押し上げられたことが確認できた。また、金粒子由来のシグナルは全体の約8割であり、全回折シグナルのプロットとほぼ重なっている。計算機実験は研究グループがSACLAで実施してきたCXDI実験に基づいて行っているという