浜松ホトニクス(浜ホト)は10月3日、管電圧300kVで分解能4μmを実現したX線非破壊検査用途向け微小焦点X線源「300kV マイクロフォーカスX線源」を開発したと発表した。

開放型X線源は、真空ポンプでX線管球を真空に維持する方式で、電子源のフィラメントから発生した熱電子を電磁コイルで収束し、金属ターゲットに衝突させてX線を発生させる。主に工業用X線CTシステムのX線源として用いられ、透視やCT撮影によって、電子基板や部品、機械、鋳物部品などの内部構造、欠陥などを検出する。

一般的なX線検査装置では、撮影対象物が厚く、重くなるほど、より高電圧で高出力のX線源が必要になる。X線管部が駆動用高圧電源と高圧ケーブルで接続された装置は、高出力にすると電子源周辺が不安定になり、コネクタ部で放電が発生するため、高圧電源部や高圧ケーブルの損傷が頻繁に起こるようになる。また、管電圧が200kV以上になると、高圧ケーブルのコネクタ部にグリースを塗布するメンテナンス作業が月2回程度必要になる場合がある。高圧ケーブル損傷による修理や取り扱い、メンテナンスには専門技術者が必要で、多額の費用が発生していた。さらに、高圧ケーブルで接続した装置は、高出力になると大型の高圧電源ユニットが必要となり、X線管部との一体化が困難だった。加えて、同タイプの従来品は、海外製のX線源しかなく、メンテナンスやトラブルが発生した際の対応時間が非常に掛かるという問題があった。

同製品は、設計を最適化することで、高エネルギーによる回路や基板、部品の損傷を抑え、特殊な絶縁構造体により30cm角に収めた小型高圧電源を開発し、300kVでは困難とされていた高圧電源部とX線管球部を一体化し、高圧ケーブルを不要とした。その結果、ケーブルコネクタ部の放電による損傷が発生しないため、接続部の修理やグリースアップ作業も不要となった。さらに、小型安定化高圧電源と最適な電子軌道設計により、電子ビームをより絞り込むことで、分解能4μmのシャープな拡大画像を得ることが可能。焦点の位置から試料までの距離を示すFODは5mm以下と短く、高拡大率画像が得られ、微小な欠陥を見つけることができる。これにより、CT撮影で鮮明な拡大画像を可能にした。また、冷却技術により高出力動作でもX線量変動が1%以下の安定したX線量が得られる。焦点移動が抑えられ、長時間のCT画像撮影でもボケのない画像が取得できる。

この他、開放型X線源に必要な消耗品の交換が容易で、電子ビームを所望の位置に移動する電子ビームアライメント機能、慣らし運転のためのウォーミングアップ機能が自動化され操作性に優れている。また、外部制御機能として、RS-232Cインタフェースを標準装備している。

同製品により、従来から管電圧が低いX線源が用いられているスマートフォン、タブレット端末などの小型電子部品の検査に加え、自動車用のアルミ鋳物や鉄部品、航空機関連の大型機械部品、大型電子部品などの内部構造や巣、クラックの非破壊検査精度が向上する。なお、同製品は、各種部品の欠陥検査などの用途に向けて、2014年夏頃の発売を予定している。

浜ホトが開発した300kVマイクロフォーカスX線源