九州大学は9月6日、福岡県、福岡県リサイクル総合研究センター(リサイクルセンター)、三井金属鉱業、日本イットリウム、ジェイ・リライツと共同で、使用済み蛍光管からのレアアースの回収・再資源化に一定の目処が立ったことから、共同プロジェクトを立ち上げて平成23年度中の事業化を目指すことを発表した。使用済みの三波長蛍光管からレアアースを回収する事業は全国初となる(画像1)。

画像1。事業化イメージ。福岡県環境部循環型社会推進課とリサイクルセンターが全体の調整や進捗管理などのコーディネートを行い、ジェイ・リライツとリサイクルセンターが蛍光管の回収、そして蛍光粉の回収を担当。そして、日本イットリウムと三井金属鉱業がレアアースの溶解・抽出・精製を担当する。九州大学とリサイクルセンターは蛍光粉の高品位化の研究を行っていく

三波長蛍光管には、イットリウム(赤)、ランタン(緑)、セリウム(緑)、テルビウム(緑)、ユーロピウム(赤、青)の5種類のレアアースが蛍光粉として使用されている(画像2)。内側表面に、光を発するためにレアアースを含む蛍光粉がコーティングされているのだ。メーカーや種類、大きさによって含まれる量は異なるが、1本当たりおおよそ2~5gの蛍光粉が利用されており、約70%がレアアースとされている。つまり、蛍光管1本当たりレアアースが1.4~3.5g利用されているのだ。

画像2。三波長蛍光管が光る仕組み。蛍光管の両端から電圧をかけると、電極から熱電子が飛び出し、水銀に当たって紫外線を発する。それがガラスの内側の蛍光粉に当たることで可視光を発する

しかし、使用済み蛍光管からはガラス、口金のアルミ、水銀が回収利用されているが、蛍光粉に含まれるレアアースについては技術や採算性の問題からほとんど再利用されていない。だが、ここ1年でレアアースは輸入価格が大変高騰しており、1年前に比べるとイットリウムが16倍、ランタンが11倍、セリウムが17倍、ユーロピウムが9倍、テルビウムが7倍となっていることから、回収再利用が希求されているのが現状だ。

リサイクルセンターでは、産学官による研究会(座長:九州大学教授平島剛氏)により事業化可能性について検討するとともに、ジェイ・リライツ、九州大と共同で、回収した蛍光粉のレアアースの濃度を上げる技術の研究を進めてきた。

また、三井金属鉱業と日本イットリウムは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構からの委託事業により、蛍光粉からレアアースを抽出・生成する技術開発を進めてきたという次第である。

共同プロジェクトでは、リサイクルセンターが全体調整や進捗管理などのコーディネートを担当し、品質や価格設定の条件などを検討し、平成23年度中の事業化を目指していく。

同事業の市場規模は、九州で1年間に排出される使用済み蛍光管のすべてが回収されたとすると、レアアースの回収量は約57t、金額にすると約25億円にも上ると試算。日本の輸入に大きく依存しているレアアース資源の安定確保に貢献できるとしている。