「猫背」が「メンタル」を沈ませる!? 脳科学者・茂木健一郎が明かす「姿勢と脳」の意外な関係とは?
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を、TOKYO FMがお送りするポッドキャストポータルサイト「TOKYO FM ポッドキャスト」で配信中! リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。

今回の配信では、「デスクワークによる姿勢と気分の変化」に関する相談に、茂木が脳科学的な視点からアドバイスを送りました。

パーソナリティの茂木健一郎

<リスナーからの質問>

私はデスクワークが多いのですが、気がつくと猫背になってしまいます。夕方になるとどっと疲れが出て、気分まで沈んでしまう日もあります。最近、「姿勢が気持ちに影響する」という話を聞き、私の気分の落ち込みも姿勢と関係しているのではないかと思い始めました。試しに背筋を伸ばしてみると、一瞬だけ気持ちが軽くなる感覚があります。これは脳の働きと関係があるのでしょうか? 日常でできる「脳が喜ぶ姿勢の整え方」があれば教えてください。

<茂木の回答>

よく大切なところに気づかれましたね。実は、脳は身体の姿勢から常にフィードバックを受けているのです。

例えば、気分が落ち込んだり、周囲に対して目立ちたくない、あるいは「かくれんぼ」をしていたいという心理状態のとき、私たちは自然と「伏し目」になりますよね。後ろ向きな気持ちになると、前傾姿勢になって視線が下がる。これは気持ちが先にあって身体が反応している状態です。

しかし、脳には「身体がその姿勢になっているから、今の心はこの状態なのだ」と判断するフィードバック機能があります。身体が前かがみになっていると、その情報が脳に伝わり、あたかも自分が後ろ向きな気持ちであるかのような心の状態になってしまうことが、さまざまな実験で知られているのです。

よく「作り笑顔でも、口角を上げるだけで楽観的な気分になる」という研究結果を耳にしませんか? これも脳へのフィードバック効果の一種です。ですから、胸を張って背筋を真っ直ぐに整えると、自然と前向きな気持ちになるというのは科学的な事実なのです。

私自身もデスクワークが多いのですが、実践している工夫が2つあります。

1つ目は、定期的に立ち上がってストレッチをしたり、用事を作って歩いたりすることです。コーヒーを淹れる、トイレに行くといった些細な用事で構いません。たとえ座っている間に前傾姿勢になってしまっても、定期的に違う姿勢を挟み込むことで、脳のモードが切り替わり気分転換になります。

2つ目は、「立ちデスク(スタンディングデスク)」の活用です。少し高い位置にパソコンを置き、立ったまま仕事をします。出張先のホテルなどでも、荷物などを積み上げて簡易的な立ちデスクを作ることがありますね。これは猫背防止に非常に効果的です。また、立って作業をすると「記憶の定着が良くなる」「クリエイティブになる」ということも脳科学的に分かっています。

姿勢を変えることで気分が変わるのは、脳が身体の状態をヒントにして、今の心のモードを決めているからです。1日中ずっと良い姿勢を保ち続けるのは無理があるでしょう。そうではなく、デスクワークの途中で立ち上がったり、姿勢を真っ直ぐにリセットする時間を1日のうちに数回取り入れることが大切です。

もう1つ、私がよく使うテクニックは「歩きながら資料を読む」ことです。パソコンで文章を打つのはデスクが必要ですが、資料に目を通すだけなら室内を歩き回りながらでも可能です。

このように、なるべく座り続ける時間を短くする工夫をしてみてください。興味があれば、ぜひ自分なりの「脳が喜ぶ姿勢」を試していただければと思います。

----------------------------------------------------

音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」

----------------------------------------------------

<番組情報>

番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室

配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)

パーソナリティ:茂木健一郎

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/dreamheart/