
老後破産につながりやすいのは、「年金が少ないから」ではなく、年金がどのように支給され、実際にいくら使えるのかを把握しないまま老後を迎えてしまうことです。
ねんきん定期便に書かれた金額を見て安心していると、実際の年金生活で戸惑うことがあるかもしれません。今回は、年金の手取り額のこと、支給の仕組みについて分かりやすく解説します。
◆年金の「額面」は使えるお金ではない
ねんきん定期便に書かれている金額を見て、「これだけもらえるなら何とかなる」と安心してしまう人は少なくありません。
ただし、ここで注意したいのは、記載されている金額は「手取り額」ではないという点です。
年金からは、次のような費用が自動的に天引きされます。
・介護保険料
・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)
・住民税・所得税(対象者の場合)
※年金から上記の費用が天引きされるのは、年額18万円以上の年金を受け取れる人です。
そのため、実際に自由に使えるお金は、額面より1~2割ほど少なくなるのが一般的です。「この金額はもらえるはず」と思っていたのに、振り込まれた額を見て「思ったより少ない」と感じる人も珍しくありません。
さらに、もう1つ見落としがちなのが、年金は給料のように毎月振り込まれるわけではないという点です。年金は「2カ月分まとめて、年6回」支給されます。
この仕組みを知らずに年金生活を始めると、
「最初に振り込まれた金額を見て、意外と多いと思い、つい使ってしまった……」
「翌月になっても振り込みがなく、そこで初めてあれは2カ月分だったと気付いた」
というケースがよく聞かれます。これまで1カ月単位で管理していた家計を、2カ月分まとめてやりくりする必要が出てくるため、感覚がなかなかつかめません。
年金生活では、「手取りと次の入金までの期間、どう使うか」を把握していないと、知らないうちに赤字が積み上がってしまいます。
◆最新データで見る「高齢者のリアルな家計」不足額はいくら?
では、実際に年金生活ではどれくらい不足が出ているのでしょうか。
総務省による「家計調査年報(家計収支編)」では、高齢無職世帯(65歳以上の夫婦のみの無職世帯および65歳以上単身無職世帯)の家計収支を発表しています。
2024年(令和6年)の調査によると、高齢夫婦無職世帯の1カ月当たりの消費支出(食費や光熱費など)が月に25万6521円。非消費支出(社会保険料の支払いなど)が、3万356円。合計した支出額は、月に28万6877円です。
それに対して、年金などの社会保障給付や仕送り金を含めた収入については、毎月25万2818円です。収入額から支出額を差し引いた金額である3万4058円は毎月の赤字額です。
同じく、高齢単身無職世帯の家計収支については、1カ月当たりの消費支出(食費や光熱費など)が月に14万9286円。非消費支出(社会保険料の支払いなど)が、1万2647円。合計した支出額は、月に16万1933円です。
一方、年金などの社会保障給付や仕送り金を含めた収入については月額13万4116円となっています。これより、高齢単身無職世帯における毎月の赤字額は2万7817円です。
この結果を、平均的な厚生年金世帯の場合と考えると、高齢者の夫婦無職世帯、単身無職世帯のどちらも、毎月約3万~4万円の不足が生じることが分かります。
この差を貯蓄で補い続ければ、資金が目減りするのは避けられません。さらに、賃貸住宅の家賃や医療費の増加、物価上昇が重なれば、家計の負担は一層大きくなります。
老後を安心して過ごすためには、年金の支給額ではなく手取り額を知ること。そして、2カ月に1回の支給額を前提に、月単位の家計をきちんと組み直すこと。それが、老後破産を遠ざける確実な対策です。
参照:家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
文=舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)