独Robert Boschは6月7日(独時間)、独ドレスデンでのAIおよびIoTを活用し、完全にネットワーク化されたデータドリブン型の300mウェハファブの建設を終え、開所式を執り行った。

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    独ドレスデン郊外に建設されたBoschの新しい半導体工場 (出所:Bosch Webサイト)

床面積7万2000m2の同工場は、高度に自動化され、完全にネットワーク化された設備と統合プロセス、そして人工知能(AI)の手法を組み合わせた新工場はドイツが国を挙げて推進しているIndustrie 4.0(Industry 4.0)に準拠した、最先端スマートファクトリであるという。開所式には、同国首相のアンゲラ・メルケル氏、欧州委員会副委員長のマルグレーテ・ヴェステアー氏らをオンラインゲストとして招いて行われたという。

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    独首相のアンゲラ・メルケル氏、欧州委員会副委員長のマルグレーテ・ヴェステアー氏らをオンラインで繋いで行われた新工場開所式 (出所:Bosch Webサイト)

7月より電動工具向け半導体の製造を開始、9月には自動車向けも製造へ

Boschの取締役会会長であるフォルクマル・デナー氏は、「Boschにとって、半導体はコアテクノロジーであり、半導体を自社で開発・製造することが戦略的に重要であるととらえている。ドレスデンではAIを駆使し、半導体の製造を新しいレベルへと引き上げる。新工場はBosch初のAI+IoT工場として、当初から完全にネットワーク化された、自動的に最適化されるデータドリブン型の工場と位置付けられている。このハイテク拠点には約10億ユーロを投入しており、130年以上にわたるBoschの歴史の中における単一投資としては最大規模のものとなる」と述べている。

生産開始は計画より半年ほど早い2021年7月からを予定しており、最初に自社の電動工具向け半導体が製造させる見通しで、自動車メーカー向け半導体の生産は9月より開始する予定だとしている。すでに約250人が勤務しており、生産開始時点での従業員数は700人規模となる見通しだという。

Boschは1958年より半導体の内製を進めてきており、1970年からはロイトリンゲン工場において市販されていない特殊半導体の製造を開始。2010年には200mmウェハを用いた製造を開始して以降、これまでにロイトリンゲンとドレスデンのウェハ工場に対し25億ユーロ超の投資を行ってきたとするほか、半導体の研究開発にも数十億ユーロを投資してきたという。

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    Boschの300mmウェハ (出所:Bosch Webサイト)

クルマの未来を見据えるBosch

同工場の特長の1つが、現実世界とデジタル世界が両立して存在する「デジタルツイン(DigitalTwin)」に対応している点だという。これにより、進行中の作業に影響を及ぼすことなく、プロセス最適化の計画と修繕作業のシミュレーションを行うことが可能になるとするほか、拡張現実(AR)メガネを活用することで、機械の保守作業を遠隔操作で行えるようになっているという。

2016年時点で、新車1台あたりに搭載されていたBosch製の半導体チップは平均9個で、主にエアバッグコントロールユニット、ブレーキシステム、パーキングアシスタントシステムなどに採用されていたが、2019年にはその数は17個以上へと増加しており、さらに今後数年間で、ドライバーアシスタンスシステム、インフォテインメント、パワートレインの電動化などにより、さらに増加することが予測されることから、新工場の建設に踏み切ったという。

こうした需要の増大は市場調査からも確認されており、ZVEI(ドイツ電気電子工業連盟)によると、新車におけるマイクロエレクトロニクス部材の価格は、1998年の120ユーロから2018年には500ユーロとなっており、2023年には600ユーロを超えると予想されている。これは、車載半導体がBoschにとっても成長分野であることを意味しているとデナー会長は、自動車のエレクトロニクス化が進む未来に賭ける姿勢を鮮明にしている。