Googleが5月15日に公開した、生成AI検索向けの最適化ガイドがマーケティング関係者の間で話題になっています。そこで示されたメッセージは、端的にいえば「AI時代にも“SEOの基本"は有効である」というものです。「テックトピア:米国のテクノロジー業界の舞台裏」の過去回はこちらを参照。
AEOやGEOは効果がなく、Googole検索でサポートしていない
Google検索における生成AI機能は、同社のコアとなる検索ランキングや品質システムに基づいており、SEOのベストプラクティスは引き続き有効だとされています。
もっとも、注目を集めたのは、その主張そのものよりも「生成AI検索の誤解を解く: ユーザーがする必要のないこと」という章に含まれる次の指摘でした。
生成AI検索の進化に伴い、それを取り巻く理論や実践、そして時には誤解も進化してきました。オンラインでは、回答エンジン最適化(AEO)や生成エンジン最適化(GEO)などの用語がよく使われますが、提案されている“ハック”の多くは効果がなく、Google検索の実際の仕組みによってもサポートされていません。
この部分だけを読むと、GoogleがGEOやAEOそのものに疑問符をつけているようにも見えます。実際「GoogleがGEOを否定した」「GoogleがGEOを規制」といった解釈も広がり、マーケティング関係者の間に動揺を生みました。
GoogleがAI検索への対応そのものを否定しているわけではない
しかし、ドキュメント全体を読むと、GoogleがAI検索への対応そのものを否定しているわけではないことがわかります。では、これは何を意味するのでしょうか。
手がかりになるのが、同じタイミングで更新されたスパムポリシーです。Googleは、検索順位を操作する行為だけでなく、Google検索内の生成AI回答を操作しようとする行為もスパムの対象として明記しました。ここに、今回の本質があります。
最新のドキュメントで、Google検索におけるスパムは以下のように定義されています。
ユーザーを欺いたり、コンテンツを目立つように表示する目的でGoogleの検索システムを操作したりするために使用される手法を指します。たとえば、検索システムを操作してコンテンツのランキングを上げようとしたり、Google検索の生成AIの回答を操作しようとしたりする行為がこれに該当します。
Googleが否定しているのは、AIに見つけられるための情報整備ではありません。同社が問題視しているのは、AIの回答を都合よく歪めようとする操作です。“AIに見つけられるための正当な情報整備”と、“AIの回答を汚染する行為”の境界線が、いよいよ引かれ始めたのです。
これはSEOの歴史とよく似ています。検索エンジンに理解されやすいようにサイトを整えることは、正当なSEOです。
「AI検索にはAI検索専用の抜け道がある」という発想をけん制
一方で、検索順位を上げるためだけに中身の薄いページを量産したり、不自然なリンクを集めたりすれば、スパムと見なされることがあります。同じように、AIに正しく理解されるための情報整備は必要ですが、AIの回答に入り込むことだけを目的にした過度なGEOは、順位低下や検索結果からの除外につながる可能性があります。
Googleは、不要なAI対策の例として、LLMs.txtのようなAI向けの特別なファイル、AI検索のためだけのコンテンツの「チャンク化」、AIシステムだけを意識した文章の書き換え、不自然な外部言及の獲得、生成AI検索向けの特別な構造化データへの過度な期待などを挙げています。
要するに、Googleは「AI検索にはAI検索専用の抜け道がある」という発想をけん制しているのです。
この動きは、すでに編集現場にも影を落とし始めています。あるライターから聞いた話では、原稿依頼の際にAI検索からの流入を狙うため、Wikipedia風に固有名詞や属性情報、事実の羅列を多めに盛り込み、ロングテールキーワードを散りばめるよう指示されたケースがあったそうです。
AI検索に拾われるための仕様ということなのでしょうが、それによって人間が読んで不自然だったり、辞典を読んでいるような面白くない原稿になってしまえば、本末転倒です。
Googleが指摘するように、ユーザーに役立つ独自性のある情報を提供し、ページをクロール可能にし、検索結果に適切に表示されるよう整える--。これはWeb検索時代から変わらない基本です。そのうえで、AI時代への適切な対応も必要になります。
AI検索時代に企業がすべきこと
従来のSEOでは、ユーザーは検索結果の一覧を見て、どのサイトを開くかを選んでいました。もちろん検索順位の影響は大きいものの、最終的にサイトを訪れるかどうかはユーザーの判断に委ねられていました。
一方、生成AI検索ではAIが複数の情報を統合し、1つの回答として提示します。ユーザーがその回答に納得すれば、個別の情報源を確認しないことも増えるでしょう。つまり、AIが読み込む情報の質が、ユーザーの理解や選択に直接影響するようになります。
だからこそ、企業も個人も情報の信頼性を高める取り組みが欠かせません。サポートページ、FAQ、プレスリリース、ECサイト、地図情報、レビューサイトに散らばる情報が食い違っていれば、AIは誤った要約を返すかもしれません。あるいは、競合他社や第三者サイトの情報をもとに、自社にとって不利な説明を組み立てるかもしれません。
公式サイトに製品仕様や価格、導入事例、サポート情報をわかりやすく掲載する。FAQを整える。店舗や拠点の情報を正確に管理する。Google Business ProfileやApple Businessのような情報管理基盤を活用する。
顧客が実際に知りたい情報を、AIにも人間にも理解しやすい形で提供する。これらは小手先のAI対策ではなく、企業情報のインフラ整備です。AIに読まれるための情報整備は今後ますます重要になり「不可欠な取り組み」となっていくでしょう。
「悪質なAI対策」が広がる懸念
その一方で、AIの回答に自社を表示させたい、競合よりも良く見せたいという欲求から、AIの回答に入り込むことを目的に、情報整備を超えてAIの判断をゆがめる方向に進むとどうなるか。
中身の薄い記事を大量に作る。実体のない権威づけを行う。第三者評価を装う。不自然な言及を増やす。ランキングや比較記事の体裁を取りながら、特定の製品を過度に持ち上げる。こうした「悪質なGEO」が実際にどこまでAIの回答に影響するかは不透明ですが、少なくともその誘惑はすでに生まれています。
しかも、生成AI検索では効果測定が難しくなります。従来のSEOには検索順位やクリック率、流入数といった比較的わかりやすい指標がありました。一方、生成AI検索の回答は、ユーザーの質問の仕方、文脈、地域、過去の検索意図、利用しているサービスによって変化します。
ある質問では自社が紹介されても、別の質問では競合だけが出るかもしれません。AIがどの情報源をどう参照し、どのような表現で要約したのかも、常に明確とは限りません。この不透明さが、危うさを生みます。Googleが「効果がない」とするハックであっても、実際には効果があるかのように語られ、広がっていく可能性があります。
企業や個人がAI検索での可視性を気にするのは当然です。AIの回答に自社がどう登場しているかを測定し、誤解があれば修正、足りない情報を補うことは、これからのマーケティングにおいて重要な仕事になります。
ただし、それはAIを欺くための仕事ではありません。AIに誤読されないための仕事であるべきです。
SEOの時代、企業は検索エンジンに見つけられるためにWebを整えてきました。AI検索の時代に、企業はAIに正しく理解されるために情報を整える必要があります。しかし、その一線を越えれば、AIに選ばれたい企業がAIに嫌われる企業になるかもしれません。
Googleの生成AI検索向けガイドとスパムポリシーの更新は、「必要なAI対策」と「悪質なAI対策」の線引きを示すと同時に、その一線を越えようとする動きに警鐘を鳴らすものといえます。

