村田製作所、5番目となる研究拠点を開設

村田製作所は2020年12月15日、横浜駅からほど近いみなとみらい21地区に新たな研究・開発拠点である「みなとみらいイノベーションセンター」と同センター内に子供向け科学体験施設「Mulabo!(ムラーボ)」を開業し、報道陣に公開した。

同センターは同社の5番目の研究開発拠点。これまでの研究開発拠点である京都本社、八日市事業所、野州事業所、横浜事業所の4拠点ではセラミックスやモジュールなど既存市場向けの開発を行っているが、同センターでは同社が次の注力市場と位置付ける、自動車、IoT、エネルギー、ヘルスケアといった新規分野の開発・研究を担うことが予定されている。

  • みなとみらいイノベーションセンター

    「みなとみらいイノベーションセンター」の外観(写真提供:村田製作所)

地上18階地下2階建てで、12月15日時点は約330名体制で稼働しているが、2021年4月オープン予定の設備もいくつかあるとのことで、最終的には1850名規模が勤務する予定だとしている。今回、報道陣には1階の車載展示室、2階のMulabo!、8階のオフィス、17階の食堂、そして18階のコンベンションセンターが公開された。

車載ビジネスの主力事業化を見据えた車載展示室

1階の「車載展示室」では、同社の自動車業界での取り組みを紹介しており、同社と共同研究を行うパートナーなどに、村田製作所の車載部品がどのようなものか、といったことを理解してもらうことを目的としている。

展示室には、自社製品がどこにどれだけの量が使われているのか調査するために分解した車の展示や、車載向けのコンデンサ、インダクタ、EMI除去フィルムなど自動車市場向けソリューションの展示が行われている。

また、さまざまな実験を行うことができるピット施設やリフト、走行状態を再現しながら実験・検証ができるシャシダイナモ付き電波暗室が展示室から続く地下に設置される予定であり、車載ビジネスを次の収益の柱としていきたいという同社の思いを垣間見ることができる。

この車載展示室は2021年4月に正式オープンの予定で、シャシダイナモ付き電波暗室の稼働は2021年6月からとしている。

  • 分解調査

    展示されている、分解調査を行った車

  • 車載展示室の完成時のイメージ

    2021年4月の完成イメージ。2020年12月15日時点では工事中だが、完成時には壁面に自社製品の展示が行われる予定だという

社員交流によるイノベーションを目的に設計された食堂・コンベンションルーム

18階のコンベンションルームは、99.5mの高さを誇る同センターの最上階に位置し、120名を収容可能なイベントスペース。会議や研修、席を取り除いての立食パーティーなど社内外問わずの利用を見込んでいるという。

  • コンベンションルーム

    18階に位置するコンベンションルーム。120席が用意されている。

  • 富士山

    取材日は天気が良かったため、18階の窓から富士山を見る事ができた

また17階の「Rダイニング」と名付けられた食堂は、400席を有し、食堂の一角には約40名が着席できるラウンジエリアと約90名が着席可能なカフェエリアを有している。

食堂とコンベンションルームは食事や研修といった本来の利用目的に限らず、社員同士の交流による"イノベーションの創出"が可能な空間として設計を行ったとしている。

  • 食堂から見える風景

    食堂からは横浜の街を眺めることができる

  • ラウンジエリア

    食堂の一角にあるラウンジエリア。社内での懇親の場としての活用を見込んでいるという

社員の意見を基にデザインしたオフィスフロア

3階から16階はオフィスフロアで、コンセプトやレイアウト設計、什器選定までを若手から選抜したメンバーのワークショップを通じて行ったという。

階ごとに異なるコンセプトで設計されており、今回、報道陣に公開された8階は、"宇宙規模のイノベーションを開発する"をテーマに「春夏秋冬と宇宙」をイメージしたデザインとなっている。

  • フリーアドレス

    「春」、「夏」エリア。若手社員の意見を取り入れ、フリーアドレスとなっている

  • ラウンジエリア

    「秋」、「冬」エリアは集中のためのエリアとなっており個人席やチームごとの固定席となっている

エンジニアの卵が生まれるきっかけの場として作られた「Mulabo!」

同センターの1階には、子ども向け科学体験施設「Mulabo!」が開設された。

同社では以前からプログラミング教育の出前授業を行うなど、子どもに科学への関心を持ってもらうことを目的とした活動を行ってきたが、Murabo!もその一環として設置された。

Mulabo!は体験型展示が行われている「ディスカバーゾーン」、ライブラリーとカフェが併設されている「シンクゾーン」、受付カウンターなどからなる「シンボルゾーン」、同社の電子部品作りの歴史がわかる展示を見ることができる「ヒストリーゾーン」からなる。

  • 入口

    「ディスカバーゾーン」の入り口

体験展示がある「ディスカバーゾーン」では、スマートフォンでQRコードを読み取ると、科学に関するクイズが出題され、回答するとポイントがもらえる。

貯めたポイントは体験型展示ゾーンにある「エレクトロニクスサーキット」、「シンクロセンシング」、「シグナルキャッチャー」の3種類のゲームに使用できる。 「エレクトロニクスサーキット」では、カートゲームのように画面の車を操作することで、最大4人で対戦できるゲームとなっている。サーキットは電子回路内という設定になっており、アイテムが「コイル」や「コンデンサ」「抵抗器」など電子機器内に使用される部品となっている。

そのため、その効果もコイルであれば「磁力でぶつかったライバルを回転させる」など遊びながら科学の知識を自然に身に着けられるよう工夫がなされている。

  • エレクトロニクスサーキット

    「エレクトロニクスサーキット」

  • エレクトロニクスサーキット

    「エレクトロニクスサーキット」で使用できるアイテム一覧。

12月15日時点では、「ディスカバーゾーン」のみ事前の予約が必要であるが、その他のゾーンは事前予約不要で入館が可能である(入館は無料)。

新たな事業創出の拠点づくりを目指す村田製作所

同社がみなとみらいという場所を選んだのは採用力の強化と外部連携を深めるという目的があるという。みなとみらいには日産自動車、京セラなど他企業の研究開発部門も多く集まっており、外部との協業を通じて新しいビジネスを作っていきたいという同社の方針があるとした。

同社代表取締役社長の中島規巨氏は、「5G技術の出現などで、IoT化など遠隔技術が恩恵を受ける事を期待しており、みなとみらいイノベーションセンターをIoT、車載など新たな事業創出の進出拠点としていきたい」と展望を述べ、同センターが今後の村田製作所の研究開発の中心拠点になることに対する期待を示した。