台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceによると、ディスプレイパネルの需要が高まってきているため、ディスプレイドライバIC(DDI)の供給もタイトになってきているという。

背景には、ファウンドリのサービス価格が、生産能力のひっ迫に伴い上昇している関係があり、それを受けてICサプライヤのパネルメーカーへのDDIの見積もり価格が第3四半期に入って上昇し始めたことが挙げられる。この動きは第4四半期も継続されるとTrendForceでは見ている。

ファウンドリはDDIよりも5Gを優先

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、PCパネルの需要が高まり、それがDDIの需要の高まりにつながっている。一方、同じく200mmウェハで生産されるPMICの需要も、4Gスマートフォン(スマホ)に比べ2~3倍使用する5Gスマホの立ち上がりで急増しており、ファウンドリ各社は利益率の高いこちらを優先的に生産しているため、DDIサプライヤ各社は、十分な量の生産数を確保するために、ファウンドリからの従来よりも高い見積もり額を受け入れざるを得ない状況となっている。

このスマホ関連については、小型ディスプレイ向けTDDI(Touch Display Driver Integration IC)も、エントリーレベルとミッドレンジHDスマホの需要が増加したこともあり、2020年第3四半期に供給不足に陥ったという。HDスマホセグメントはコストに敏感であるため、これらのスマホ向けデバイスはファウンドリの300mm、80nmプロセスで生産されてきたが、現在、一部のファウンドリが、80nmプロセスから55nmプロセスに生産能力の一部を移行させていることもあり、80nm TDDIの供給不足が顕在化してきたという。

TDDIに関しては、タブレットパネルTDDI ICの需要も徐々に高まりを見せており、ファウンドリの生産能力はこちらにも振り分けられるようになっている。タブレットパネルTDDI ICの平均販売価格はスマホパネルTDDI ICよりも高いためで、こうした動きにより、ファウンドリの生産能力をDDI分に確保することが今後、さらに難しくなっていくことが見込まれるという。

Huaweiへの制裁でファウンドリの生産能力不足は解消するのか?

米国政府によるHuaweiに対する制裁範囲の拡大は、2020年以降のHuaweiのスマホ製造に影響を及ぼすことが予想される。強化された規制により、基本的にHuaweiはほぼすべてのファウンドリに生産を委託することができなくなるためである。このため、いくつかのファウンドリのラインに空きができることが期待されるが、一方でHuawei以外の5Gスマホ向けデバイスの需要が高まってきており、結局は200mm、300mmともに生産能力はタイトな状況が続くとTrendForceでは指摘している。

PCディスプレイ向けDDIの価格はファウンドリサービスの値上げがパネルメーカーへの販売価格に転嫁されることとなる。こうした動きを踏まえ、一部のICサプライヤでは、ノートPCパネルDDIの生産を従来の200mm@0.1Xμmプロセスから300mm@90nmプロセスへ移行させることを検討しているという。しかし、小型TDDIが300mm@80nmで生産されており、かつ今後も引き続き堅調に推移することが見込まれていることから、55nmプロセスにHD TDDIの生産が移行するまではタイトな状況が続きそうな気配である。