NEC、富士通、日立製作所の3社は4月27日と同28日にそれぞれ2025年度通期(2026年3月期)の決算を発表した。各社とも収益性の改善が進み、過去最高益や増益を達成する一方で、AIの位置付けや成長戦略には違いも見られる。本稿では3社の決算内容を整理し、その特徴を読み解く。
NEC、増収増益を達成 - 「AIは実装で勝つ」戦略を鮮明に
はじめにNECから見ていこう。2025年度通期で増収増益を達成し、売上収益は前年度比4.7%増の3兆5827億円、Non-GAAP営業利益は同859億円増の3972億円と大幅な増益となり、収益性の改善が際立つ決算となった。
事業別では、国内ITサービスとANS(Aeronautics and Space、ナショナルセキュリティ領域)が引き続き業績を牽引している点は、3Q時点での評価から一貫している。特に公共・ミッションクリティカル分野における大型案件の実装力が、NECの競争優位として強調された。
戦略面で特徴的なのが「SaaS is dead」という言説を正面から捉え直し、NECはLLMそのものではなく、顧客業務への“実装”こそがAI競争力の源泉と位置付けている。その中核にあるのが、業種横断でAIを組み込むフレームワーク「BluStellar」であり、SI的な強みをAI時代に再定義する動きといえる。
2026年度 業績予想は、売上収益が前年度比2.3%減の3兆5000億円、Non-GAAP営業利益が前年度比228億円増の4200億円、Non-GAAP当期利益が前年度比52億円増の2850億円を計画している。
富士通、減収でも過去最高益 - UvanceとAIで収益構造転換
続いては富士通。同社の2025年度決算は、売上収益が前年比1.3%減の3兆5029億円と減収となった一方、調整後営業利益は同27.1%増の3905億円と過去最高益を更新する結果となった。ハード事業の縮小を前提に、利益重視の構造転換が着実に進んでいることが数字からも読み取れる。
成長ドライバーとして存在感を示したのが、クロスインダストリー戦略「Uvance」だ。2025年度のUvanceの売上は7093億円に達し、2026年度も最高益更新を見込むとしている。セグメントとしての「サービスソリューションの成長加速」という評価が、通期で裏付けられた形だ。
また、時田隆仁CEOは次期中期経営計画と2035年を見据えた長期ビジョンに言及し、「信頼できるテクノロジー」と「AIドリブン」を中核に据える方針を改めて強調した。富士通の場合、AIは汎用基盤というよりも、業種・社会課題に結びついた“フィジカルAI”の文脈で語られている点が特徴といえる。
一方、2026年度の業績見通しは前年比0.2%増の3兆5100億円、調整後営業利益は同8.8%増の4250億円、調整後当期利益は同7.3%増の3200億円と、営業利益、当期利益ともに引き続き過去最高益の更新を計画している。
日立、Lumada拡大で過去最高益 - 社会インフラ×デジタルを深化
最後に日立製作所を見ていこう。売上収益は前年比8%増の10兆5867億円、調整後EBITA(Adj. EBITA)は1兆3114億円、同期利益は8023億円、コアフリーキャッシュフロー(FCF)は1兆1702億円と、いずれも過去最高を達成。コアFCFについては大型案件の前受金による増加が大きく影響したとしつつも、Inspire 2027で掲げた目標の達成に向け、期初の想定を上回る進捗となったことを明かした。
最大の成長エンジンは、データ・AI活用基盤「Lumada」の拡大だ。1月の3Q決算記事で「エナジーとLumadaがけん引」と評価された構図は通期でも変わらず、社会インフラとデジタルの融合モデルが日立の収益性を押し上げている。
今回の決算説明では、中期経営計画「Inspire 2027」の進捗にも言及されており、日立はAIを単体の成長事業としてではなく、OT(現場)×IT×プロダクトを貫く全社的な価値創出基盤として位置付けている点が改めて示された。
2027年3月期の見通しは、売上収益が前年比5%増の11兆1000億円、利益は同476億円の成長となる8500億円を計画。2期連続での過去最高益達成に向けては引き続き戦略投資を実行し、成長をけん引するエナジーやDSSを中心に、主要事業4セクターで増収増益を目指す考えだ。
NEC、富士通、日立の2025年度決算は、いずれも日本のIT・製造業がAI時代にどう向き合おうとしているのかを浮き彫りにした。NECは「実装」を軸にSIの価値を再定義し、富士通はUvanceを柱とした利益重視の構造転換を進める。日立はLumadaを中心に社会インフラとデジタルを融合させ、全社的な価値創出を加速させている。共通するのは、AIを単なる技術トレンドとしてではなく、事業モデルそのものに組み込もうとする姿勢だ。3社の違いは、その実装の仕方と重心の置きどころにあると言えるだろう。





