アドバンテスト、PDF Solutionsと業務提携 - サブスクモデルの提供を模索

半導体試験装置大手のアドバンテストは、半導体市場向けデータアナリティクスソリューションベンダの米PDF Solutionsとの間で業務提携したことを発表した。また、併せてアドバンテストが第三者割当増資により約6500万ドル相当のPDF Solutionsの普通株式を取得することも発表した。

アドバンテストとPDFが今回合意した内容は、「PDFによるアドバンテスト社内およびアドバンテスト顧客に向けた、PDFのソフトウェアアナリティクスプラットフォーム『Exensio』をベースとしたソフトウェア・プラットフォーム(Advantest Cloud)の開発支援」、「アドバンテストのテストプラットフォームとPDFのExensioをベースとしたテクノロジーソリューションの共同での開発と販売」、「アドバンテストにおける5年間のExensioプラットフォームソフトウェア使用ライセンス」、「アドバンテストによるPDF社普通株式330万6924株(約6500万ドル)の取得」の4項目となっている。

PDF Solutionsのクラウドベースのビッグデータ解析プラットフォームであるExensioは、ICデザインからウェハ製造、ウェハテスト、組立、ファイナルテスト、システムレベルテストまでの半導体バリューチェーンをカバーしており、歩留まり、収益性、信頼性の最大化に向けて半導体製造装置の制御に利用されている。

半導体市場がより高性能なデバイスを追求する中で、AIと機械学習技術を用いたPDFのソフトウェア・プラットフォームによるビッグデータ解析は、微細なプロセスノードにおける歩留まり改善や、デバイス品質の保証、テストや計測コストの削減に活用できるという。

アドバンテストは、このような「Exensio」をベースとしてソフトウェア・プラットフォーム(Advantest Cloud)を構築して社内で使うだけではなく、テスタ顧客に提供していくという。アドバンテストのPDFとの提携は、アドバンテストの試験・計測ソリューションを半導体バリューチェーン全体に拡大するというコミットメントを体現するものであり、またアドバンテストの中長期経営方針「グランドデザイン」の達成に向けて重要なマイルストーンとなるものだとアドバンテストでは説明している。またPDFは、Exensioプラットフォームが半導体バリューチェーンすべての半導体製造装置と接続されることの重要性を認識しており、前工程企業、後工程企業を問わず、すべての半導体製造装置メーカーとの関係を維持し、協業していくとしてえる。

アドバンテストは、自社の半導体検査装置とPDF Solutionsのソフトウェアを組み合わせることで、テスタを販売した後も継続して課金できるサブスクリプションビジネスを構築し、販売拡大を図る狙いがある模様である。

アドバンテスト代表取締役兼社長の吉田芳明氏は「今回の提携によって、進化する半導体バリューチェーンでの顧客価値創出が可能となり、当社の多様な顧客に対してより強力なソリューションの提供ができるようになる。生産規模の拡大や、テストコスト削減の困難さは、業界全体を生産性向上のためにデータ・アナリティクスへとシフトさせている。PDFと提携することで、設計工程からシステムレベルテストまで、顧客の製造効率や経済性を向上させるための魅力的な技術ソリューションを提供することができる。今回のPDFとの提携によりAIベースのテスト解析ソリューションを想定より数年前倒しで提供できるようになった。PDFもアドバンテストも、共通の顧客を世界中に有しており、両社はすでに大手IDMにおいてPDFの技術を組み込んだ当社装置の評価ですでに協業を開始している」と述べている。

顧客満足度世界トップのアドバンテスト

半導体デバイスおよび製造装置市場調査会社の米VLSIresearchによる半導体製造装置顧客満足度調査2020で、アドバンテストはライバルのTeradyneを僅差で押さえて世界一の顧客満足会社に選ばれた。

• 2020年の半導体製造・検査装置顧客満足度ランキング (出所:VLSI Research)

同調査は、サプライヤのパフォーマンス、カスタマサービスの質、製品のパフォーマンスの3分野で計14項目について世界中の半導体製造・検査装置の顧客にアンケートしたもので、アドバンテストは全項目ともに10点満点で9点以上の得点を得ている。評価結果の説明によると、一番低い得点だったのは、ソフトウェアの9.1点であった。今回のPDF Solutionsとの提携は、このソフトウェアにおける顧客評価の向上に向けたものという見方もできる。

• アドバンテスト満足度評価項目ごとの顧客採点の内訳　(出所:VLSI Research)

同アンケートでは、アドバンテストについてコメントした回答者の43%が、同社のサービスとサポートについて述べており、コメントした顧客の17%が製品の品質が高く、応答時間が速いことを評価し、7%が信頼性と安定性についてコメントしていたという。同社は、過去32年間にわたりトップ10ベストサプライヤ(ベストサプライヤとして認定されるためには10点満点で7点以上＝3つ星以上の得点が必要なため2020年は9社のみ)に連続して選ばれている。