世界的に見て、照明は最も多くのエネルギーを消費する機器の1つです。エネルギーコストとエネルギー使用が環境に与える影響に対する懸念が高まる中、照明の効率と機能を最適化し、その電力需要を削減するために技術とイノベーションを適用する方法を見いだすことがますます重要になってきています。

住宅向けアプリケーションにおける照明のスマート制御は、産業用ビルの場合の4倍の量になります。全体でも、照明用スマート制御はIoTの中で最も急速に成長している分野です。一般的には、当然のことながら、住宅用システムは産業用システムよりもシンプルで、部品表(BoM)やコストがはるかに単純です。

ほとんどのコネクテッド照明制御の主要な推進力は効率(したがってコスト管理)ですが、住宅および産業市場で照明アプリケーションを開発する際に関わってくる別の側面も数多く存在します。モジュール方式は重要であり、照明システムを拡張し分割できると同時に、モバイル機器での照明制御機能により専用画面を使わずに洗練されたインタフェースを利用できます。高度な制御レベルを利用できるため、医療や農業などの分野を含めて照明の新たな用途が登場しています。

簡単な照明制御は、照明の点消灯機能から始まり、LEDの調光や色の制御にまで拡がっています。より複雑なシステムでは、照明、エネルギー管理、輝度制御、センシング、ダウンリンク接続の完全自動化をサポートしています。

コネクティビティ・プロトコル

コネクティビティ(接続性)は照明制御システムにとって非常に重要な技術ですが、ここでいうコネクティビティには多くの側面があります。例えば、照明と全体的な制御を行うビル管理システム(BMS)間のコネクティビティ、システムの各要素間のコネクティビティ、システムのセットアップや試運転中に使用されるコネクティビティなどです。コネクティビティ・エレメントが実装されると、様々なセンサ(温度、湿度、照明レベル)を追加できます。これらのローカルまたはクラウドベースのセンサは、システムを維持、最適化するための情報の報告に使用できるため、産業用アプリケーションに莫大な価値をもたらします。

使用されている主なプロトコルには、Bluetooth Low EnergyやZigBee AllianceによるGreen Power、Power over Ethernet(PoE)などがあります。近距離無線通信(NFC)も使用されますが通常はセットアップと試運転のみになります。

メッシュ技術は多数の機器の相互接続や外部接続が可能なため、産業用照明アプリケーションに最適です。現在では、Bluetooth Low Energyには最大32,000台の機器のメッシュを構築する機能が組み込まれており、セキュリティを標準装備しているため、範囲を拡張した照明ソリューションのセットアップが非常に簡単になります。

  • BLEメッシュ機能

    図1:メッシュフレームワークに対応する様々な機能を搭載可能なBluetooth Low Energyメッシュ機器

メッシュ内では、各ノードは照明として機能しながら1つ以上の他の機能を備えており、それぞれがメッシュフレームワーク全体の機能に不可欠です。中継ノードは受信したメッセージを再送信でき、必要に応じてネットワークをほぼ無限に拡大できます。プロキシノードは、Bluetooth Low Energyではない、またはBluetooth Low Energy対応ではない他のノードと通信し、それらをメッシュに参加させますが、「フレンド」ノードは低電力モードで動作している他のノードのためにメッセージを保管します。低電力ノードはメッセージを求めて定期的にフレンドノードをポーリングするため、より多くのエネルギーを節約できます。

セキュリティは、どんなコネクテッドシステムにおいても最も重要ですが、Bluetooth Low Energyメッシュネットワークも例外ではありません。あらゆるメッセージは暗号化/認証されており、難読化によってメッセージの追跡が困難になるため、リプレイ攻撃から保護できます。Bluetooth Low Energyプロトコルには、セキュリティキーを更新するプロセスと、ノードをメッシュに追加するための別のセキュアなプロセスがあります。ノードをBluetooth Low Energyネットワークから削除する際には、「ゴミ箱」攻撃を防止するためにこれもセキュアに実行されます。

Bluetooth Low Energyメッシュネットワーキングの代替手段の1つがGreen Power技術で、Bluetooth Low Energyメッシュよりも以前から確立されています。Green Powerプロトコルは、IEEE 802.15.4 MACとPHYの上に構築されており、 Ikea、Xiaomi、Philipsなどの照明製品に採用されています。環境に優しい低電力のプロトコルのため、新しいビルのトレンドに適合し、Bluetooth Low Energyよりもビルへの実装が簡単であるだけでなく、配備や再構成も容易です。

Bluetooth Low Energy(現在)がネイティブなメッシュモデルを搭載し、クラウドとの接続にスマートフォンを利用できるのに対し、Green Power技術はDotdot、またはZigBee cluster library(ZCL)に依存しZigBeeプロトコルに対応しているモバイル機器がほとんどないため、専用のゲートウェイを備えています。

  • BLEメッシュ

    図2:Bluetooth Low EnergyメッシュとZigBeeプロトコルの比較

Green Powerプロトコルはバッテリ不要であるか、またはエナジーハーベスティング技術を利用して、ポータブルで環境に優しく、メンテナンス不要の照明スイッチを提供できます。配線工事が不要なため、ほぼどこにでも設置でき、設置費用も非常に安価です。

  • エナジーハーベスティング・スイッチのペアリングプロセス

    図3:シンプルで迅速なエナジーハーベスティング・スイッチのペアリングプロセス

スイッチの設定とエナジーハーベスティングは、オン・セミコンダクターの「NCS36510」などのデバイスを使用して、素早く簡単に実現できます。この低電力SoCにより、高機能のパワーマネジメントとIEEE 802.15.4準拠のトランシーバを実現できます。最小限の外付け部品で、完全でセキュアなワイヤレスネットワークの設計をサポートします。

照明システム向けのPower over Ethernet

ケーブルを引き回し敷設するのは、どんな建築プロジェクトでも常に大きな費用がかかるものであり、ビルの照明のメイン電源配線を安全かつ規格に準拠して敷設することも例外ではありません。しかし、LEDベースの照明への移行とPower over Ethernet(PoE)の利用可能性により、1本のケーブルを電源とコネクティビティの両方に使用できるようになり、状況は大きく変わりました。

PoE 2規格(802.3bt)は、アプリケーションに最大90Wの電力を供給する能力を備えており、LEDベースの照明には十分です。この実際の例には、IEEE 802.3bt準拠の統合コントローラを使用し、イーサネットケーブルを介して電源供給する60Wのコネクテッド照明ソリューションがあります。このソリューションは最大2本のLEDストリングに対応可能で、 オン・セミコンダクターのハイサイド検出を備えた定電流降圧型コントローラ「FL7760」を組み込んだLEDチャンネルを2つ装備しています。

この構成によって、使用周波数が1.3MHzのPWM信号で0~100%の調光制御ができます。輝度制御はRF対応のハーベスティングソリューションでの使用に適した、「RSL10」などのBluetooth Low Energy無線によって行います。RSL10の電源電圧は単純な高電圧LDOによって供給されています。

このソリューションによって90%より高い効率を達成でき、PoEコントローラから得られるエネルギーのほとんどすべてを光に変換し、最大6,000ルーメンの光を放出する設計が可能になります。このような性能は電力需要を抑えながらスマート照明ソリューションを提供するという一般的な要求に十分適合しています。

コネクテッド照明プラットフォーム

オン・セミコンダクターは、産業用LED照明ソリューション向けのモジュール方式の開発キットであるコネクテッド照明プラットフォームを開発しました。設定可能なデュアルステージのプラットフォームは最大70 Wの電力を供給し、選択した電源モジュールに応じて、AC電源またはDC電源から、あるいはPoEを介して、7,000ルーメンの光を放出することが可能です。このシステムは最大4本のLEDストリングに対応しており、各LEDドライバボードには各LEDストリングに対して2個のFL7760ドライバを搭載し、1ストリングあたり27Wを供給できます。

  • コネクテッド照明プラットフォーム

    図4:コネクテッド照明プラットフォーム

RSL10システムインパッケージ(RSL10 SIP)をベースとした接続モジュールにより、オン/オフ、調光、プログラミングなど、低電力ワイヤレスによる制御を選択できます。提供されているCMSIS-packを使用することにより、多くの利用可能なユースケースを活用し、機能を追加して照明アプリケーションをカスタマイズできます。また、RSL10 FOTAモバイルアプリ(Google PlayとApple iOSで入手可能)によりワイヤレスファームウェアのアップグレードにも対応でき、RSL10 Sense and Controlアプリによりモバイル機器から環境センサとアクチュエータを制御およびモニタできます。

まとめ

コネクテッド照明は、産業機器メーカによるエネルギー消費量の削減の役に立つことで、モノのインターネット(IoT)において大きな可能性を秘めています。コネクテッド照明プラットフォームは、最も要件が厳しいLED照明アプリケーションに必要なあらゆる技術の最高のものを組み合わせた、最適でコスト効率の高い設計です。

著者プロフィール

ブルーノ・デーミアン(Bruno Damien)
ON Semiconductor
EMEA地域担当
IoTストラテジックマーケティング・ディレクター