半導体市場調査会社である米IC Insightsは、2009年~2019年における半導体工場(ファブ)の閉鎖もしくは転用状況を調べた結果、ちょうど100件であり、国・地域別では日本が最多となる36件であったことを発表した。

2番目に多かったのは米国の33件で、この2国だけで全体の7割を占める結果となった。2000年代中盤以降、半導体メーカーの多くがファブレスあるいはファブライトへとビジネスモデルを転換。また同時に合併や買収も急増し、生産効率化が図られた結果、古いプロセスノードと小さなウェハサイズのファブを中心に次々と閉鎖もしくは別用途への転用が進められてきた。

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    2009~2019年に閉鎖された半導体ファブ数の国・地域別内訳 (出所:IC Insights)

IC Insightsでは、2020年〜2021年にかけて4つのファブが少なくとも閉鎖される予定としている。内訳はルネサス エレクトロニクスが2件、新日本無線(NJR)が1件、そしてAnalog Devices(ADI)が1件となっている。

また、先端プロセスに対応するファブの建設ならびに設備投資コストは世代が進むごとに高騰しており、今後はさらに多くの半導体メーカーがファブライトないしファブレスにビジネスモデルを転換させることが予想されることから、今後数年間で古くなったファブの閉鎖はさらに進むものと予測している。

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    2009~2019年に閉鎖された半導体ファブ数のウェハサイズ別推移 (出所:IC Insights)

ただし、すでに古く非効率なファブの多くは閉鎖済みであり、残っている世界の製造能力を見れば、かなり効率的な状況になっているとみられるともしている。

2008年ころに発生したリーマンショックの直後に、半導体メーカー各社は自社ファブの運用コストを綿密に調査し、ファブの閉鎖を次々に行ったの波が訪れたことは注目に値するべきだろう。それから10年余り経過した2020年の現在、新型コロナウイルスが世界経済に大きな影響を与えており、業界関係者は、これを機に再び半導体ファブの閉鎖の波が発生する可能性があることも頭のどこかに置いておく必要があるだろう。