超越した複合体としてのスマートシティのユースケース

国連は、2015年から2050年の間に、世界の人口は72億人から97億人へと32%増加し、都市部の人口は39億人から63億人へと63%増加すると予想しています。このような驚異的な人口増加は、すでに都市が市民に基本的なサービスを提供するにあたり多大なストレスを与えており、こうした状況は今後も続くと見られています。そして、より多くの都市と大都市が必要になり、住宅、オフィス、病院、学校に加え効率的な公共インフラ整備と施設などが求められるようになります。

急激な都市化と成長による、天然資源の需要増加は、都市の大きな課題です。また国連の調査によって、現在、都市部は地球上のわずか2%しか占めていないにもかかわらず、総エネルギー量の最大80%を消費し、二酸化炭素排出量の75%を占めていることも判明しています。したがって、都市部が持続的に成長するためには、天然資源をより有効に活用し、人々の希望に叶う都市を実現できるような賢い選択をする必要があります。

スマートシティとは、スマートビルの集合体のようにシンプルなものではありません。スマートシティは超越した複合体を形成することで、すべての要素を統合し相互に連携することによって市民生活の向上実現を目的としています。

ちなみに、ここで述べる超越した複合体とは、「Transcendental Coalescence(トランスセンデンタル コアレセンス)」を指し示すもので、トランスセンデンタルとは数学的には「計算や数学では算出できないもの」、哲学的には「物理的な領域を超えたもの」であり、コアレセンスは、複数要素を連結または結合して1つの塊または全体を形成するプロセスを示しており、それらを掛け合わせることで、別のビジネスまたは産業分野が所有するテクノロジーと事例がマッシュアップ(融合)されただけではなく、直感的で最適化されたビジネスの成果を提供するために人、プロセス、テクノロジーを融合したものを示しています。

持続可能な都市型の暮らしを実現しながら、人口を分散させる実行策や生産性、安全性、セキュリティを向上する取り組みなど様々な事例を統合することでスマートシティは実現できます。

  • ジョンソンコントロールズ

    スマートシティのエコシステム

上の図でみられる通り、スマートシティエコシステムは以下のような複数のシステムおよびサブシステムによって構成されています。

  • 廃棄物処理およびその管理
  • クリーンエネルギー管理
  • 交通管理、運搬システム、インフラを基盤としたエコな乗り物
  • フィジカルセキュリティ、サイバーセキュリティ、モニタリングと都市部の脅威全般のモデリング
  • 上下水道、水質管理
  • オンライン行政サービス(交通、公共サービス、医療、安全・セキュリティなど)

これらの専門的な要素は建物、区域、自治体を通して最終的に都市レベルに適用されます。技術の絶え間ない発展によって、設計やデザインの観点においても共通テーマであるスマートシティが構想から現実になろうとしています。

まず初めに行うことは設計段階で厳密かつ詳細なペルソナ(ユーザー層)とユースケースを定義することです。問題やそのユースケースを調査し、スケールに応じて解決策を見出す必要があります。

テクノロジーはソリューションを1つに統括することにおいては有用ですが、全てのソリューションが類似した問題を解決に導くとは限りません。

例えば、エネルギー使用の最適化に取り組むシンガポールとインドのジャイプールにおいて設計上の課題は異なっています。

エネルギー余剰傾向の強いシンガポールでは、供給側のエネルギー管理の最適化が必要とされています。対してジャイプールでは、エネルギーが不足しているため、需要側のエネルギーを最適化、管理する必要があります。

スマートシティエコシステムやコンポーネントを構築する場合、テクノロジーの選択が重要になります。構造的、非構造的に関わらず、テキストデータ、ビデオ監視フィード、ソーシャルメディアフィード(SNSなどのコンテンツ)などビッグデータ(ペタバイト単位)の処理がスマートシティを創る上で必要となります。こうしたデータは相互に連動し、先を見越した意義あるアクションを起こせるよう接続され、適切に処理される必要があります。

テクノロジーコンポーネント、システムおよびサブシステム上でのデータフローに関するナレッジ、そして関連する分析はこれらのシステムおよびサブシステムの基盤にもなります。電子機器類の老朽化については(ハードウェアやソフトウェアコンポーネントに関わらず市民の継続的な需要を満たす必要のあるものについて)正しくアップデートすることで将来的な成果に結びつくという認識を持つことが必要です。