ZOZOの前澤友作氏がホスト・キュレーターを務める月旅行プロジェクト「#dearMoon」は2019年6月7日、そのイメージ画像を世界で公開した。あわせてザ・ビートルズのリンゴ・スター(Ringo Starr)氏へのインタビュー動画も公開され、準備が着々と進んでいることをアピールしている。

一方、前澤氏らを乗せて飛ぶ予定の、スペースXの宇宙船「スターシップ」も、打ち上げに向けた開発や試験が急速に進んでいる。

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    前澤氏と8人のアーティストを乗せた、宇宙船スターシップの想像図 (C) #dearMoon/SpaceX

#dearMoonプロジェクト

#dearMoonは、ファッション通販サイトZOZOTOWNを運営する、ZOZO代表取締役社長の前澤友作氏がホスト・キュレーターとして、各界を代表する最大8名の世界的なアーティストを月旅行に招待し、そこで受けたインスピレーションをもとに作品を創作する、宇宙を舞台にしたアート・プロジェクトである。

プロジェクトが発表されたのは2018年9月のことで、米宇宙企業スペースXのイーロン・マスクCEOと前澤氏が共同で会見。その内容に世界は大きく驚いた。

参考:さらに進化したスペースXの火星移民計画と、新たなる「月世界探険」 第1回 『タンタンの冒険』に着想を得て、生まれ変わった「BFR」

出発は2023年の予定で、スペースXが開発中のロケット「スーパー・ヘヴィ(Super Heavy)」と、それによって打ち上げられる宇宙船「スターシップ(Starship)」を使う。

前澤氏らを乗せたスターシップは「自由帰還軌道(free return trajectory)」と呼ばれる軌道に乗り、地球と月を約1週間で往復飛行する。いったんこの軌道に乗ると、基本的にエンジンを噴射する必要はなく、放っておいてもかならず月でUターンして、地球へ戻ってくることができる

月のまわりを回る軌道に入ったり、月面に着陸したりはできないが、比較的安全性が高い。また、最接近時には月から200kmほどにまで近づくことができ、また条件によっては、月の裏側を通り抜ける際に、その地平線から昇る地球を見ることもできる。

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    月の上空を通過するスターシップの想像図 (C) #dearMoon/SpaceX

招待されるアーティストは、画家や音楽家、小説家、ファッション・デザイナー、映画監督などが対象となるという。前澤氏によると、誰を選ぶかはこれから決めるとしている。

前澤氏は発表時、「子どものころから、私は月を愛していました。月を見つめ、想像力を満たしていました。だからこそ、月の近くまで行けるこの機会を、逃したくないと思ったのです」と月飛行への想いを語っている。

また、アーティストを招待する目的については、「月と丸い地球からインスピレーションを受けたアーティスト達が生み出す作品を、人類の財産として後世に残したい」と語る。ちなみに前澤氏は、絵画など美術作品の世界的コレクターとして、またミュージシャンとしても知られる。

「パブロ・ピカソが月を間近に見ていたら、どんな絵を描いたんだろう。ジョン・レノンが地球を丸く見ていたら、どんな曲を書いたんだろう。彼らが宇宙に行っていたら、今の世界はどうなっていたんだろう。まだ一度も見たことのないような夢を見ることができるかもしれない。歌ったことのないような歌が歌えるかもしれない。描いたことのないような絵が描けるかもしれない」(前澤氏)。

この月旅行にかかる金額は明らかになっていないが、約1000億円ほどと考えられている。

最新のイメージ画像が公開

その#dearMoonプロジェクトは2019年6月7日、報道関係者に対して、月旅行のイメージ画像を公開した。

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    公開された、#dearMoonプロジェクトのイメージ画像。「スターシップの中から月、宇宙、地球を眺める人々は、何を想像し、何を創造するのだろうか」とのキャプションがつけられている (C) #dearMoon/SpaceX

画像には、スターシップの船内で月を眺めながらスケッチする人物が描かれており、「スターシップの中から月、宇宙、地球を眺める人々は、何を想像し、何を創造するのだろうか」とのキャプションがつけられている。

また、ザ・ビートルズのリンゴ・スター(Ringo Starr)氏に、#dearMoonプロジェクトについてインタビューした動画も公開された。

まず「#dearMoonプロジェクトについて知っていますか?」と問われたスター氏は「もちろん知っています」と即答。「前澤さんに2人分の席を用意してほしいと伝えてください」と返した。

また、「この月旅行でどのようなインスピレーションを受けられると思いますか?」という質問には、「『家(地球)に帰りたい』って曲がたくさんできるんじゃないでしょうか(笑)」と冗談を飛ばした。

ザ・ビートルズのリンゴ・スター(Ringo Starr)氏に、#dearMoonプロジェクトについてインタビューした動画 (C) #dearMoon/SpaceX

今後も、世界の著名人にインタビューを行う予定だという。

なお、前澤氏の月旅行をめぐっては、5月20日付の東京スポーツ紙が「キャンセルするのでは」と報道している。前澤氏が所有する絵画がオークションにかけられたことを背景に、株式市場では経営悪化を危惧する声が浮上。ZOZOの株も大量に売られ、株価が急落した。それを受け、市場関係者の話として「月旅行はキャンセルするしかないのでは」との見方を伝えた。

これに対して前澤氏は、Twitterで反論。「どれだけの関係者が月旅行に想いを馳せ、努力と工夫を続けているか」と批判するとともに、月旅行のキャンセルを否定した。また、翌21日には再度Twitterを更新し、「月旅行の準備は着々と進んでますよ!」とアピールしている。