縄文時代の終わりに急激な人口減少があった―。約2500年も前のこうした興味深い現象を東京大学の研究グループが現代の日本人男性のDNA解析から明らかにした。寒冷化により狩猟生活をしていた縄文人の食料が減ったことが原因らしいという。研究成果はこのほど英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。

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    縄文人由来Y染色体を用いて推定した集団サイズの変化。縄文時代晩期から弥生時代にかけて縄文人の人口が減少したことを示している(提供・東京大学)

東京大学大学院理学系研究科の大橋順准教授と大学院生の渡部裕介さんらは、同大学大学院医学系研究科の徳永勝士教授(研究当時)らと共同で、日本人男性345人の男性だけが持つY染色体の塩基配列を解析した。Y染色体は父親から息子へ受け継がれるため、変異をもとに系統を調べることができる。

現在の日本人は縄文人と大陸からの渡来系弥生人の混血と考えられているが、解析の結果、日本人のY染色体は七つの系統に分かれ、縄文人に特有の型を持った系統の男性が122人いることが判明した。このため研究グループはこの122人を対象に共通祖先をさかのぼる遺伝子系図解析を実施。遺伝子の変異が起きる速度を基に、過去にさかのぼって人口の推移を推定した。

すると、約2500年前の縄文時代晩期から弥生時代初期にかけて、人口が大幅に急減していたことが明らかになった。男性の人口だけでなく女性を含めた全人口が急減したと推定できるという。この時期は、日本を含み世界的に気候が寒冷化しており、気温が下がったことで食料供給の減少が人口減につながったとみられる。研究グループによると、その後人口が増加したのは、気候が再び温暖化し、渡来系弥生人がもたらした水田稲作技術によって、安定した食料供給が可能になったためと考えられるという。

縄文後期の人口減は遺跡の発掘などで推定されていたが、遺伝子解析からも裏付けられた形だ。

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