カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などの研究チームは、新しい形状のスーパーキャパシタ用電極を設計し、電極の高効率化と長寿命化を実現したと発表した。

電極の形状は木の枝葉をヒントに設計した。材料にはカーボンナノチューブ(CNT)とグラフェンが使われている。他の形状の電極と比べて効率が10倍以上向上するという。研究論文は「Nature Communications」に掲載された。

  • 木の枝葉をヒントに設計されたスーパーキャパシタ用電極

    木の枝葉をヒントに設計されたスーパーキャパシタ用電極。材料にはCNTとグラフェンが使われている (出所:UCLA Webサイト)

実験によると、新設計の電極は同様の炭素材料を用いている市販の最高性能品と比較して質量あたりの電気容量(キャパシタンス)が30%高く、それだけ多くの電荷を蓄えることができる。また、面積あたりで比較すると、キャパシタンスは30倍という高さになるという。

出力については、他の形状の電極と比較して10倍以上高くなる。寿命については、1万回以上の充放電サイクル後に初期容量の95%を維持できることが確認されているという。

スーパーキャパシタの性能を向上させる上で課題となっているのが、電極の効率と寿命である。電極はエネルギー貯蔵の担い手であるイオンをスーパーキャパシタの表面に引き付け、スーパーキャパシタの外部で電気エネルギーとして利用できるようにする働きをしている。

スーパーキャパシタの内部では、イオンは電解液中に溶けた状態で蓄えられている。電極が電気をどれだけ高速に供給できるかは、電解液と電極の間でどれだけの数のイオンが交換されるのかによってほぼ決まる。交換されるイオンの数が多いほど、スーパーキャパシタは高速出力が可能になる。

研究チームは今回、電極の表面積を最大化することによって、より多くの電子を引き付けるための空間を作り出すことを試みた。この設計を行う上で、木の枝と葉っぱの構造がヒントになったという。植物の光合成プロセスでは、葉の表面で大量の二酸化炭素(C02)を吸収できるようになっているからである。

ただし、電極の大きさは植物の葉と比べて極めて小さなもので、炭素原子で構成されたナノスケールの構造体となっている。木の枝に相当する部分はCNTでできた中空の円筒構造で、その直径は20~30nm。葉に相当する部分は端部が鋭利になった花びら状の構造で、サイズは幅100nm程度、材料にはグラフェンが使われている。

全体としては、グラフェンの葉をCNTの枝の周りに配列させた構造となる。グラフェンには電極の安定性を向上させる働きもある。この電極はスーパーキャパシタが使用される酸性条件・高温といった環境でも良く動作するという。