データ通信制限で実感する「Webアクセシビリティ」

サイボウズ 小林氏: サービス運営において「障害者」というペルソナを作ると、話がずれてしまうのは感じます。

ヤフー 中野氏: そうですね、スマホでWebを閲覧するとして、晴れている屋外では晴眼者でも見づらかったり、混雑した電車のなかで片手でしか扱えなかったりすることがあるかと思います。特定の人のための施策でなくてさまざまな人、多様な場面における使い勝手を考えるものなんです。

ヤフー 中野氏

とはいえ、Webアクセシビリティには抽象的な内容もありますから、はっきりした例として、障害者の方の例示をするのは必要なことではあります。まずは障害者の方への対応が広まってから、誰にでも適用可能なものであることを伝えるほうがスムーズだと考えています。

グリー 嘉久氏: 個人的な話になりますけど、最近スマホを格安SIMで使ってまして、データ通信残量が心元ない時に画像表示をオフにして使っています。そういう時、alt属性に画像の代替テキストが入力されていないと、それが一体何にまつわる画像がわからなくて、表示するかどうかの判断がしづらいんです。しっかりテキスト情報が入れてあれば、自分に必要な画像だけを表示して、データ通信残量を節約しながら使えます。

サイボウズ 小林氏: 僕、実は今ちょうど操作ミスで大容量のデータをスマホで受信して、通信制限されてしまってて…、その例はかなり胸に迫ります(苦笑)

アクセシビリティ全般に言えることですが、障害の有無で属性をばっさり切り分けるというよりは、例えば暗闇であればどういう点が不便か、音が聞こえにくいところであればどういう機能が便利か、そこにいるのが老若男女どの立場の人か…というように、さまざまな要素が折り重なっていることが伝わると嬉しいですね。

実は最近、「サイボウズ UX Cafe」で、インクルーシブデザインという考え方に基づいて、障害者・高齢者など、多様な人々のニーズを発掘するワークショップを行ったんです。今挙げていただいた例もそうなのですが、障害者や高齢者のかかえている不便が、健常者にとっても地続きであることが実感できる場となりました。

あるカテゴリの人たちへの対応、というより、別角度の目線から新たな気づきを得るという取り組み方で、Webアクセシビリティを捉えてもらえればとも思います。