半導体市場調査会社である米IC Insightsは8月12日(米国時間)付けで、2016年の半導体メモリ市場は前年比11%減になりそうだという見通しを発表した。メモリの中でもDRAMは19%も減少し、2016年の半導体市場全体をマイナス成長へ陥れる元凶となる一方で、NAND型フラッシュメモリは2%増成長すると予測している。

2016年DRAM市場は前年比19%のマイナス成長へ

2016年は、全メモリ市場にとって良い年ではなさそうで、特にDRAMにとっては悪夢の年になりそうだ。DRAMの最大のユーザーであるデスクトップおよびノートブック型パソコン(PC)の長期凋落に加えてスマートフォンの成長が1桁台に鈍化し、(スマートフォンの画面大型化に伴い)タブレットPCの出荷も減少している。これらが、DRAMの過剰在庫をもたらし、DRAM平均販売価格を下げることを余儀なくされている。

DRAM平均販売価格は2016年通年で16%下落し、DRAMの出荷数量の3%の下落と相まって、世界のDRAM市場は2016年で19%縮小すると予測される(図1)。

図1 デバイスタイプごとの世界市場成長率(米ドル基準)。縦軸は前年比成長率、横軸は(左から順に)DRAM、NAND、その他のメモリ、メモリ総計。青棒は2014年、赤棒は2015年、緑棒は2016年) (出所:IC Insights)

IC Insightsが区分した33種類のIC製品カテゴリ中、成長率の観点からDRAMは最悪のカテゴリとなるだろう(図2)。DRAMは2016年の全メモリ市場(前年比11%減と予測)および2016年の総IC市場(2%減と予測)の成長の足かせとなっている。

図2 33種類の半導体カテゴリ別成長率ランキング(米ドル基準)におけるDRAMの位置付け。2013年、2014年は30%超のトップクラスの成長率、2015年は18位、2016年(予測)はマイナス19%で33位(最下位)。DRAMの成長率はあっという間に天国から地獄へと変わった (出所:IC Insights)

DRAM価格は乱高下の連続

DRAM市場で、チップ販売価格が大きく振れることは珍しいことではない。図3に、2007年以降のDRAM平均販売価格の推移を示す。まるでアルプス山脈の輪郭のように、劇的なアップ・ダウンをくりかえし、ボラティリティ(変動率)の高さをあらわにした。DRAMチップの年間平均販売価格は、2013年、2014年にそれぞれ48%、26%上昇し、世界のDRAM市場を毎年3割以上拡大した。この2年間、DRAM市場はもっとも成長し、DRAMメーカーはわが世の春を謳歌した。しかし、この結果、在庫過剰が生じ、2015年後半から2016年前半にかけてDRAM価格が急落した。その結果、DRAM平均販売価格は、2014年に3.16ドルと最高値をつけた後、2015年3.03ドル、2016年(予測)2.55ドルと大きく下げている。

図3 DRAMの年間平均販売価格(左縦軸、単位ドル、青棒で表示)と前年比成長率(右の縦軸の単位は%。赤線で表示) (出所:IC Insights)

DRAM価格は下げ止まりやや値上げ傾向

DRAMの平均販売価格は、2016年第2四半期(4~6月)の終わりころに下げ止まり、2016年後半から2017年にかけてやや値上げ傾向にある。クラウドやIoTのビッグデータを処理するために必要なエンタープライズ(サーバ)システムの売り上げが好調なためである。モバイル機器、特にスマートフォンに使われる低電圧DRAMも底堅い需要がある。スマートフォンの新モデルが今秋に登場するので、この需要が伸びれば、年末から来年にかけてDRAM価格の上昇が期待できる。

しかし、中国勢が徐々にDRAM量産の準備をはじめており、中国での量産が2017年末から2018年にかけて始まれば再び世界規模でDRAMの供給過剰が発生する可能性が高い。今後は、中国の投資動向に注目する必要がある。