ダニエル・デフォー(~1731、英国の著作家)とベンジャミン フランクリン(~1790、米国の政治家)によると、人は死と税金から逃れる事はできません。不幸にして、電子技術者には逃れられないものがもう1つあります。それは"ノイズ"です。電気的ノイズから逃れる事はできませんが、各種ノイズ因子について理解する事、さらにそれらが総システムノイズレベルにどのように寄与するのかを理解する事で、その影響を最小限に抑える事ができます。システム全体を見渡すと、ノイズはさまざまな場所から発生する可能性があります。オペアンプの内部にはノイズ因子が存在し、オペアンプ回路内の受動素子からもノイズは発生します。さらに、電波やAC電源といった外部のノイズ因子も数多く存在します。本稿では、オペアンプの動作に影響するノイズ因子について検討します。

フリッカノイズ

1/fノイズとも呼ばれる「フリッカノイズ」は、導通経路の不規則性とトランジスタ内部のバイアス電流に起因して生じる低周波現象です。高周波数帯域では他のノイズ因子によるホワイトノイズが優勢となり、フリッカノイズは無視できます(このため1/fノイズと呼ばれる)。この低周波ノイズは入力信号がDCに近い場合、すなわち歪みゲージ、圧力センサ、熱電対等、センサ信号の変化が緩慢な場合に、しばしば大きな問題となります。

アンプ内部のフリッカノイズを制御する事はできませんが、応用に適したアンプを選択する事でこのノイズ因子を最小限に抑える事ができます。1/fノイズが強く懸念される場合、オートゼロまたはチョッパ型アンプが最善の選択です。これらのアーキテクチャでは、1/fノイズはオフセット補正プロセス中に除去されます。すなわち、このノイズは入力で発生し、その変化が比較的緩慢であるため、アンプのオフセットと同様の扱いで補償されるという事です。

ショットノイズ

フリッカノイズほど知られていない内部ノイズ因子に「ショットノイズ(またはショットキーノイズ)」があります。このノイズは、電荷担体の導通の不完全性に起因して発生します。電流とは印加された電位によって生じる電子の運動です。これらの電子が障壁(金属内の欠陥等)を貫通する前に電位エネルギーが増大します。

ショットノイズは電流に関係しているため、電流が流れなければショットノイズは発生しません。ショットノイズはガウス分布を示し、周波数と温度に依存しません。最後に、ショットノイズはDC電流に反比例するため、電流が小さいほどショットノイズ電圧は高くなります。したがって、DC電流を増減させてノイズの変化を観察する事で、ショットノイズの影響を判断できます。

熱雑音

このノイズは、発見者の名を取って「ジョンソンノイズ」とも呼ばれ、すべての能動および受動回路素子で発生します。熱によって電子の運動が活発化すると、電子の不規則な熱振動から生じるノイズが増加します。このため、熱雑音はショットノイズと同様にガウス分布を示し、周波数に依存しません。

熱雑音は受動素子でも発生します。その最たる例が抵抗器です。抵抗器の熱雑音は抵抗値と温度によって決まります。抵抗値を小さくすると熱雑音は減少します。また、温度を下げると熱雑音を抑制できます。