放射線源の可視化や訓練のためのシミュレータ技術

続いて(2)の(a)のガンマカメラ。福島第一原発のように、災害時に放射線環境下となった施設内などにおいて、ホットスポットの位置などの確認を行うための移動台車(Tsubaki)へ搭載可能な高放射線環境場(300mSv/h雰囲気で使用可能)対応型ガンマカメラである(画像30・31)。

このガンマカメラは、撮影範囲の対象物との距離測定も行うので、距離の影響を補正した線量率分布を算出可能で、光学カメラも搭載されているので、その映像に放射線分布情報を重ね合わせた表示を行う。つまり、放射線分布を可視化する仕組みだ(画像32)。

画像30。Tsubakiに搭載されたガンマカメラ

画像31。ガンマカメラの各部の説明

画像32。ガンマカメラによる放射線源の可視化画面。通常の光学画像に、色味を加えて、放射線の強弱を表す

(2)の(b)の汚染状況マッピングは、SakuraやTsubakiなどにレーザスキャナやサーモグラフィ、ガンマカメラなどを搭載し、それらにより収集したデータをオフラインで処理することで、3次元形状と汚染状況を可視化する技術だ。PC用のアプリケーションとして開発されており、画面上でインタラクティブに視点を変更しながら閲覧するといったことも当然ながら簡単に行える。現時点では、実験室でレーザスキャナとサーモグラフィを連動させた結果が確認されており、今後はガンマカメラを使った検証を進めていく予定だ(画像33)。

画像33。汚染状況マッピングのイメージ。上の部屋が、レーザスキャナで3次元計測され、そこにサーモグラフィデータが加えられ、点灯中のライトが熱源であることがわかる

(2)の(c)の「災害対応ロボット訓練シミュレータ」は、産業技術総合研究所で開発されているロボットのソフトウェア開発・シミュレーションのためのオープンソース・ソフトウェアプラットフォームである「OpenHRP」をベースとして開発された。いきなり実機を用いた操縦練習では、高価で台数のあまりないロボットを壊す恐れがあるため、まずはシミュレータで操縦者に操作方法に慣れてもらうことが狙いである(画像34)。

SakuraやTsubakiなどのクローラ型ロボットの走行シミュレータとなっており、操縦用PCとそのまま接続して、模擬操縦を行える可能な点が特徴(画像35)。練習メニューには、操縦機の操作方法、ロボットの各動作機能の制御方法、ロボットの搭載カメラからの画像の見方などがある。典型的なプラント内走行において、基本となる操縦技術をあらかじめ身につけることができ、実機でのトラブルの予防にも役立つ。もちろん、段差走行、そして最も難しい階段昇降などの訓練にも利用可能だ。今後、練習メニューの追加や訓練ガイドブックを充実させていく予定としている。

画像34。災害対応ロボット訓練シミュレータの画面

画像35。シミュレーションを行っているイメージ。シミュレータを動作させたPCと操縦用PCをつないでシミュレーションを行える

水中での状況確認が可能な水陸両用ロボット

(2)の(d)は、水陸両用ロボット(特に名称、通称などはない)について(画像36~40、動画9・10)。水中構造物からの漏水箇所調査を想定し、漏水箇所把握のためのモニタリングデバイスと、そのモニタリングデバイスを搭載することが可能な水陸両用移動装置というわけだ。公開されているスペックは、全幅が650mm、細小旋回半径φが900mm、走行速度が陸上で毎秒0.3m、水中で毎秒0.1m。中性浮力化で水中遊泳も可能である。

画像36。水陸両用ロボット。コンパクトなキューブ型

画像37。水陸両用ロボットを横から。クローラはトピー工業のもの

画像38。水陸両用ロボットの背面

画像39。全部のカメラ周りをアップ。水中遊泳用のスラスタが備えられている

画像40。水陸両用ロボットの各部の名称

動画
動画9。水陸両用ロボットのイメージビデオ(を撮影した動画)。水中での移動の様子も見られる
動画10。水陸両用ロボットが狭いクランクを抜けていく様子

また水中モニタリングデバイスは、まずドップラー流速計がある。広がり角度50度の円錐状領域の平均流速計測ができ、流速計測レンジは秒速±10m、流速計測精度は秒速±25mm、流速計測領域は0.06~5m(画像41)。それから、超音波カメラ。解像度は距離1mで20mm、計測速度は毎秒約1フレームとなっている。また、水中カメラも搭載(画像42)。

実際に利用するイメージとしては、構造物の表面に沿って移動しながら、ドップラー流速計で構造物近傍の流速を計測し、流速が検出されると、構造物表面に接近。そして超音波カメラと水中カメラでもって、当該部の形状や状況を確認するという流れだ。形状不連続部、割れなどの状況により構造物の損傷状況を特定できるというわけである。

画像41。ドップラー流速計で捕らえた情報

画像42。左が水中カメラの、右が超音波カメラの画像