三菱重工業は2月20日、高放射線環境など人が近づけない場所を自由に移動し、伸縮はしごの先に搭載したロボットアームで高さ8mまでの高所作業ができる遠隔作業ロボット「MHI-Super Giraffe(MARS-C)(スーパージラフ)」を開発したと発表した。

同ロボットは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」による委託を受け、東京電力の福島第一原子力発電所での作業を想定し、バルブの開閉や除染、漏洩検出・特定、切断などの多様な作業に対応することを目指して開発されたもの。

動力源はリチウムイオン2次電池を採用し、遠隔操作にはイーサネットを採用することで、連続5時間の稼働が可能。駆動バッテリおよび充電システムには三菱自動車工業の電気自動車(EV)「i-MiEV」の技術を応用することで、4tの質量ながら、15°傾斜面での走行や平地における速度6km/hでの走行を可能としたという。

また、台車モジュール(移動機構)、荷揚げモジュール(伸縮はしご機構)、搭載モジュール(ロボットアーム部)、エンドエフェクターモジュール(先端工具)の4つのモジュールで構成されており、台車モジュールは4輪駆動4輪操舵方式により、その場での回転(スピン)や真横への移動が可能なほか、高所作業時にはアウトリガーを伸ばしすことで安定性を高めることが可能。また、荷揚げモジュールには5段伸縮式を採用しており、高さ8mで150kg以上の荷揚げ能力を発揮するという。搭載モジュールは、人の腕と同じような7つの関節を持ち、高い自由度と小型軽量性を確保しているほか、エンドエフェクターモジュールは、バルブの開閉が可能で、着脱は遠隔操作により空気圧で簡単に行える構造を採用しているという。

さらに、作業時の転倒防止のために、ロボット動作による姿勢変更に対して重心位置をリアルタイムで計算し、アウトリガー支持範囲から重心が外れそうになった際に、操縦者へ警告を表示するアラーム機能を搭載しているほか、各アウトリガーに搭載した荷重センサの値を常に監視し、浮き上がる前に動作を停止させる機能も搭載している。

加えて、各モジュール間のインタフェースには、駆動電力や通信、油圧など各種ラインの簡便な接続方式を採用しているが、その関連情報はすべて公開されるため、同社以外の企業などが、同ロボットに対応するモジュールの開発などに参入することが可能になっているという。 そのため同社では今後、他社との協業も含め、折りたたみ式やパンタグラフ式の荷揚げモジュール、油圧駆動でせん断破壊作業を行うウォールクラッシャーや荷揚げ用デッキ・バケットなどの搭載モジュールの開発を検討していくとしているほか、先端工具として、溶接やドリル、ハンド、漏洩検知などの各種用途向けなどの開発を行っていく計画としている。

MHI-Super Giraffe(MARS-C)の外観

MHI-Super Giraffe(MARS-C)の主な仕様