ただ、これについては、CPUそのものというよりも、マザーボードに関係したものではないかと筆者は考えている。CPUに直接+12Vを突っ込むわけには行かないので、CPUソケットの周囲にDC/DCコンバータを核にした電源レギュレータという回路が設けられているのはご存知の通りだが、こうした回路は変換効率が100%ということはありえない。

実際の効率は、流れる電流によって変動するが、概ね80%~90%台(最近は95%近いものもあるようだ)となる。つまり100W分の電力を流すと、10~20Wは無駄になる計算である。これは当然熱として放出されるので、CPU周囲の(DC/DCコンバータを構成する)トランジスタにはかなり大きめのヒートシンクが搭載されているわけだが、Phenom 9950とPhenom II 940は、AMD 790を使う第一世代のM3A32-MVPで、一方Phenom II 955は最新世代のM4A79T Deluxeであり、当然電源周りの効率も変わっていると想像される。

6W、というのは変換効率向上や周辺回路の見直しで削減したと考えやすい数字であり、逆にCPU側のプロセスの改善で向上したと考えるにはちょっと考えにくい(負荷に応じてもっと差が開いたり縮まったりするのが普通だ)からだ。実際には動作周波数の差(3GHz vs 3.2GHz)を加味すると、電源向上により10W以上の削減が行われ、一方動作周波数が上がった分多少CPU側の消費電力も増え、トータルで6W程度に収まっているというあたりではないかと想像される。

一方、Phenom II 940 vs Phenom 9950は、これはもう同じマザーボードであるから、純粋にCPUの消費電力の差と考えられる。

以前こちらで、「CPUの絶対的な消費電力がこの時点でどの程度かを知る方法が無いから、これがPhoto03に出てきた『アイドル時最大40-50%削減』なのかどうかは判断のしようがないが、とりあえず消費電力が減っていることだけは確認できた。」と書いたが、実際Power Saveモードにおける消費電力は17.4W vs 31.5Wで45%の削減となっているし、High Performanceモード同士で比較しても42.6W vs 58.3Wだから、30%の削減が実現できている。

また稼動時の消費電力を見ると、Phenom 9950が120~130Wで、ほぼ140WというTDPの枠ぎりぎりまで使い切っているのに対し、Phenom II 940は多くても90W強で、140WというTDPの枠を軽々クリアしていることが判る。なるほどオーバークロックに強い訳である。