宇宙事業はSDGs的観点で投資を引き込めるか

素人目には確かに、地球観測衛星の企業がSDGsの実現に貢献することでインパクト投資につながる事例に思える。だが長谷川氏によると、「衛星データの汎用性が高く、投融資段階で課題を明確に特定し難い点」「特定の課題解決に実質的に資する事業者は衛星データの利活用を行う事業者であり、投資後に継続的かつ正確な指標計測が難しい点」という課題が挙げられるという。

衛星データそのものは何にでも使える汎用性の高いもので、実際にSDGsに活かしているのはデータを分析、利用しているManna Irrigationのような事業者だ。インパクトの測定という観点からは、「事業から得られる指標が直接的にインパクトを示すとは言い難い」と指摘される可能性もあるという。事業がインパクト投資にフィットしているという判断を得るには、「衛星データの取得から、衛星データを活用した課題解決を担うソリューションの開発・提供といった『具体的なインパクト』までを一貫して行う」ことが求められる、と長谷川氏は分析する。

衛星地球観測はもともと農林水産業や防災といった分野で幅広く利用されてきたもので、広くインパクトを生み出す可能性を持つものだ。汎用性を持つサービスではあっても、いずれはインパクト投資家が「間接的なインパクト」の定量的な測定を行うことも想定されるというが、現状では評価が難しい側面がある。現在の測定指標に馴染む開発を進めておくことや、広報的な努力も必要と考えられる。セッションの中では「体制が整っていないスタートアップはSDGsへの貢献を打ち出すことも難しい」というコメントも聞かれた。

とはいえ、「宇宙領域における事業がディープテックの中でも特に資金が必要であるとされている」(長谷川氏)という事情もある。SDGsはともすれば「お題目」とみなされる部分があるものの、投資を引き込む入り口と考えれば、今後は無視できない経営の要素になってくるはずだ。