2013年秋から続いていました「デプスセンサによるジェスチャー認識編」が前回で終わり、次のシリーズ「3D点群編」へと突入する前に、いつものように各テーマの合間を埋める横道記事として、「プロジェクションマッピング」について紹介したいと思います。

まず最初に「プロジェクションマッピングとはどういうものか」を技術的な面から簡単にだけ紹介します。次に、実際のイベント等でのプロジェクションマッピングの応用例を紹介し、3D形状にマッピングしながら映像投影が、どういったところが見所となるかについて話します。最後に、各種センサーと連携することで、その場に居る人の動作に反応して投影されている映像の様子が変わる「インタラクション」込みのプロジェクションマッピングを紹介したいと思います。

「プロジェクションマッピング」とは

プロジェクションマッピングは、その名前の通り「プロジェクターで投影した映像を、対象の形状に合わせてマッピング」する技術です。5年前ほどではまだマニアックな物であったのが、最近ではすっかり色々な所で見かけるようになり、一般的な物となった技術だと思います。

オフィスなどでプレゼンテーションを行う目的や、映画館で映像を投影するなどの目的に主に使用する「プロジェクター」は、大きなスクリーンに対して映像をスクリーンの平面に真っすぐ垂直方向に投影し、四角形の映像を投影します。これに対してプロジェクションマッピングでも同様にプロジェクターを用いるところまでは同じです。一方違うのは、対象の3D形状に合わせて、「輪郭内の部分にだけ」投影したり、「面の変わり目ごとに投影され具合を調整」するなど、3D的に対象の形状に沿った映像を投影するマッピング(位置合わせ)を行った上で、映像を投影するという点です。また、マッピングして投影するだけでなく、観客が見る方向から見た時にどのように映るかも考えて自然に位置合わせした映像(正面方向以外からプロジェクション中の映像を見た時にも不自然にならない映像)を作成するのが、プロジェクションマッピングです。

例えば、以下の動画は、筆者の地元である大阪で行われている「大阪城」へのプロジェクションマッピングです。

大阪城3Dプロジェクションマッピング

動画を見て頂くと、城の範囲のみに、城の「形に沿って」映像が投影されていることがわかると思います。また、各階と各階の屋根ごとに、きちんと映像が領域毎に区切られて異なるパターンが投影されている様子がわかると思いますが、これが可能となるのは、プロジェクションマッピングではプロジェクターから投影される映像(画像)上の各点と、3D空間中の対象物(この場合は大阪城)の表面上の各点が「マッピング(対応付け)」されているからです。

このように、「実世界の」対象に投影している映像を、(対象の形に沿って)変化させることで、躍動感がありアーティスティックな映像アトラクションを「実世界の物体の表面に」対して投影させることができることから、現在では様々な場所でプロジェクションマッピングによるイベントが開催されるようになっているのはご存知のとおりと思います。ちなみにマイナビニュースの方でも、以下の記事で、この夏休みのプロジェクションマッピングの情報がまとめられています。

http://news.mynavi.jp/articles/2014/08/13/pm5/

林 昌希(はやし まさき)

慶應義塾大学大学院 理工学研究科、博士課程。
チームスポーツ映像解析プロジェクトにおいて、動画からの選手の姿勢の推定、およびその姿勢情報を用いた選手の行動認識の研究に取り組み中。(所属研究室が得意とする)コンピュータビジョン技術によって、人間の振る舞いや属性を機械学習・パターン認識により計算機で理解する「ヒューマンセンシング技術」全般に明るい。技術商社でエンジニアをしていたこともあり、海外のIT事情にも詳しい

一方、デプスセンサー等で撮影した実世界の3D点群データの活用を推進するための「Point Cloud コンソーシアム」での活動など、3Dコンピュータビジョンのビジネスでの普及にも力を入れている。また、有料メルマガ「DERiVE メルマガ 別館」では、コンピュータビジョン・機械学習の初~中級者のエンジニア向けの、他人と大きな差がつく情報やアイデアを発信中(メルマガでは、わかりやすい理論や使いどころの解説込みの、OpenCVの初心者向け連載なども展開中)。

翻訳書に「コンピュータビジョン アルゴリズムと応用 (3章前半担当)」。