若い恒星を取り巻くガスと塵の円盤には、幾重ものリングや隙間が見つかっている。成長中の惑星が周囲の物質に影響を与えた結果かもしれない。しかし、そのような模様があるというだけで、そこに惑星がいると判断できるのか。

この問いに迫るには、惑星そのものと、それが周囲に及ぼす影響を同じ場所で捉える必要がある。若い惑星系「WISPIT 2」の観測が、両者を結び付ける貴重な機会を与えてくれた。連載「最新研究から読み解く 天文学・宇宙物理学の最前線」の過去回はこちらを参照。

円盤の模様と惑星の存在を結び付ける

惑星は、若い星の周囲にある「原始惑星系円盤」の中で形成される。成長した惑星の重力は、円盤内のガスや塵の分布、ガスの運動に影響を及ぼす。このため、リングや隙間に加え、ガスの規則的な回転からのズレも、まだ見えない惑星を探す手掛かりとして注目されてきた。

ただし、円盤の構造には惑星以外の成因もあり、惑星自体を直接撮像することも難しい。従来は、ガスの乱れが見つかったとしても、原因となる惑星と照合できるとは限らなかった。

WISPIT 2は、距離約133パーセクにある、年齢約500万年の若い系だ。先行研究では、2つの巨大惑星WISPIT 2bと2cが確認されている。外側のbは中心から約57天文単位に位置し、質量は木星の約5倍と推定される。

マックス・プランク天文学研究所のMyriam Benisty氏らがarXivで発表した論文「Mapping the WISPIT 2 Planet-Hosting Cavity at Sub-Hill-Radius scales」において、この系をアルマ望遠鏡で詳しく調べ、既知の惑星と円盤の構造・運動を比較した。

ガスを速度ごとに分けて観察する

チリ北部、アタカマ砂漠の標高5000メートルの高原に設置されたアルマ望遠鏡は、多数のアンテナを組み合わせて天体を観測する電波望遠鏡だ。

研究チームは、塵が放つ波長約0.88ミリメートルの放射と、一酸化炭素分子が放つ電波を解析した。長い基線による高い空間分解能と、短・中間基線による広がった弱い放射への感度を組み合わせ、円盤内の細かな構造から、明るさの弱い広がった放射まで調べた。

ガスの運動を知る鍵は、ドップラー効果である。ガスがこちらに近づくか、遠ざかるかによって、受信する電波の周波数がわずかに変わる。その違いを利用して、視線方向の速度ごとにガスの画像を作る。

その結果、惑星bの軌道に対応するガスの隙間と、内側の惑星cの軌道より内で放射が乏しい領域が見つかった。2つの惑星の間にはガスのリングがあり、淡い塵のリングも新たに捉えられた。塵のリングの明るさは、中心から約33天文単位でピークを示す。

  • 最新研究から読み解く 天文学・宇宙物理学の最前線 第18回

    若い恒星WISPIT 2を囲む原始惑星系円盤。左はALMAが0.88mmの電波で捉えた塵からの連続波放射、中央は一酸化炭素ガスの放射、右はVLT/SPHEREによる近赤外線の散乱光である。白点は確認された若い巨大惑星b、cの位置を示す。観測する波長によって、円盤内の塵やガスの構造が異なる姿で現れる(論文より)

さらに、速度ごとの画像には、惑星bの位置付近で、ガス放射の輪郭が局所的に折れ曲がる「キンク」状の特徴が現れた。これは、惑星と円盤の相互作用を計算したモデルが予想する、ガスの運動の乱れに整合する形である。

対称なチャンネルを鏡映して浮かび上がった惑星の周辺

ただし、このキンクだけから、惑星が引き起こした速度の乱れを断定することはできない。円盤表面の高さが変化しても、速度ごとの画像には似た折れ曲がりが生じうるためである。実際、この円盤は内側が比較的平らで、外側ほど放射面が高く広がっている。

そこでチームは、系全体の速度を基準に、それから等しい速さだけ青方・赤方へズレた2つの画像を選んだ。一方を円盤の短軸に関して鏡映してから差し引き、対称的な円盤の成分を取り除いて局所的な違いを浮かび上がらせた。

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    天球面上で見た、傾いた回転円盤の模式図。傾いた円盤が回転すると、短軸の反対側では視線方向の速度の向きが逆になる。赤方偏移チャンネルを短軸で鏡映すると、青方偏移チャンネルと重ね合わせられる。その差分をとれば、通常の回転円盤に共通する対称的な成分が抑えられ、局所的な相違が浮き彫りになる

すると惑星bの近くに、周囲とは異なる一酸化炭素放射が残った。この信号は、画像の解像度や基準速度を変えても検出された。単なる速度のズレだけでは説明できず、放射の明るさや、スペクトル線の幅の変化も関わることが分かった。

この放射は、惑星を取り巻く小さな円盤(周惑星円盤)だけに由来するのだろうか。惑星の近くには、その重力が物質をつなぎとめられる範囲の目安となる「ヒル球」がある。解析では、この放射はヒル球のかなりの範囲に及び、外側まで達している可能性も示された。

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    対称な速度チャンネルを鏡映して差し引いた一酸化炭素ガス放射の残差図。 系統速度から同じ大きさだけ青方偏移側・赤方偏移側へズレたチャンネルの一方を、円盤の短軸に関して鏡映してから差し引いている。点線の楕円は、惑星b・cが円盤と同一平面を回ると仮定した場合の軌道であり、一点鎖線は平坦な円盤面を仮定した等速度線を示す。対称的な円盤成分を抑えることで、惑星bの軌道付近に局在する一酸化炭素ガス放射の非対称成分が現れる(論文より)

想定されるコンパクトな周惑星円盤より広がっているため、周惑星円盤だけで全体を説明することは難しい。研究チームは、惑星が周囲に生む渦巻き状の波に加え、惑星による局所的な加熱や、周惑星円盤が寄与している可能性を挙げる。ただし、それぞれの寄与を分離するには、速度をさらに細かく識別できる観測が必要だ。

見えない惑星を探す手法の検証へ

この研究は、すでに直接撮像された惑星の位置で、惑星と円盤の相互作用に対応する運動学的な特徴を確認した点に、その重要性がある。研究チームは、この組み合わせが確認された最初の系と位置付けている。

理論モデルからは、惑星が重いほど周囲のガスの速度に大きな変化を生むことが予想される。今後、WISPIT 2b付近の運動を詳しく測れれば、この関係を検証し、ガスの乱れから未知の惑星の質量を推定する手法を確かめる基準になるかもしれない。

円盤に刻まれた模様を、惑星の存在や成長とどう結び付けるか。WISPIT 2は、惑星形成の現場を観察するだけでなく、その読み解き方を検証する場にもなり得るのである。