シャープは9月15日、AIインフラの需要に対応するため、AIサーバ事業に参入すると明らかにした。2027年度の販売開始に向けて、企業や自治体、研究機関、データセンター事業者を対象にNVIDIA RTX Proサーバを搭載した「業務向けAIサーバ」の受注を開始。また、同HGXシステム搭載の「大規模学習・推論向けAIサーバ」についても今後受注を開始すると発表した。同日に都内で記者説明会を開催した。

シャープ、AIサーバ事業参入の狙いと成長戦略

冒頭、シャープ 代表取締役 社長執行役員CEOの河村哲治氏は「AIの進化は想像をはるかに超えるスピードで進み、今後はAIで人々の暮らしや仕事の価値を変えていくことが重要となる。生成AI、エージェンティックAI、フィジカルAIと進展し、AIを活用する場面が増え、ハイパースケーラーのみならず、研究機関、自治体、企業自らがAI計算基盤を持ち、新たな価値創造につなげていく動きがみられる」と述べた。

  • シャープ 代表取締役 社長執行役員CEOの河村哲治氏

    シャープ 代表取締役 社長執行役員CEOの河村哲治氏

そのうえで、河村氏はAIサーバ事業参入の背景について「AIが社会インフラになるためには、多くの組織が安心して利用できる計算基盤を整備していくことが重要。当社は、この大きな変化を新たな成長機会と捉え、鴻海グループの製造力・調達力に加え、さまざまなパートナー企業の協力を得ながらAIサーバ事業への参入を決定した」と語る。

同社は、生成AIの普及による推論需要の拡大やフィジカルAIの進展、ソブリンAI需要の高まりを背景に、AIインフラ市場は中長期的に成長すると判断。AIサーバ事業を新たな収益の柱として育成する考えだ。

こうした状況をふまえ、同氏は「今回の挑戦は単なる新規事業ではなく、当社の変革に向けた重要な取り組みになり、将来的にはAIサーバ事業と既存のハードウェアソリューションを融合し、新たな価値創造を目指す」と意気込みを示した。

推論需要拡大、フィジカルAI、オンプレミス需要が市場を押し上げる

シャープ スマートビジネスソリューション事業本部 AIサーバー事業統轄部 統轄部長の宇徳浩二氏は「日本国内におけるAIサーバ市場のCAGR(年平均成長率)は2030年に約4兆円、2035年には約7兆円への拡大が見込まれている。こうした好調な市場環境を支えるものとして『推論用途の急拡大』『フィジカルAI』『オンプレミスの加速』の3つが挙げられる」と説く。

  • シャープ スマートビジネスソリューション事業本部 AIサーバー事業統轄部 統轄部長の宇徳浩二氏

    シャープ スマートビジネスソリューション事業本部 AIサーバー事業統轄部 統轄部長の宇徳浩二氏

推論用途の急拡大では、これまでの学習用途中心だったAI需要は、生成AIの普及により推論用途へと重心が移りつつある。利用者や用途の拡大に伴い推論処理量が増加することで、AIサーバ需要も一部の大規模事業者向けから幅広い企業・組織へ広がるとみられている。

  • AI需要の主役は「学習」から「推論」に

    AI需要の主役は「学習」から「推論」に

また、フィジカルAIに関しては現場の機器から収集されるデータは刻々と変化する。そのため、データ量と計算回数が増加し、学習・推論のための継続的な計算需要が生まれるとともに、導入拠点が拡大すれば推論処理も増加する。

  • フィジカルAIが推論需要を生み出す

    フィジカルAIが推論需要を生み出す

オンプレミスの加速については、政府・金融・医療など重要データを国内・自組織内で管理するソブリンAI(AI主権)や、製造ライン検査といった現場に近いリアルタイム処理のための低遅延要求、AI計算基盤を分散配置することで電力負荷の最適化を図る動きがあり、クラウドのみならずオンプレミスを含めた、ワークロードごとのハイブリッドな基盤が求められている。

  • AI基盤は最適配置の時代へ

    AI基盤は最適配置の時代へ

宇徳氏は「こうした市場変化により、AIサーバの需要は国内企業やさまざまな現場へ広がり、製品の選定や導入、運用が複雑になっている。お客さまが求めるものはAIサーバという製品だけでなく、自社に合った形で導入ができ、導入後も安心して運用できる点にある」と力を込める。

NVIDIA採用とパートナー連携でAIサーバ事業を展開

AIサーバ事業の展開にあたり、プラットフォームにNVIDIAのAIプラットフォーム、調達・製造は鴻海の製造・調達力を活かす。また、販売体制や導入後の運用・保守体制の整備を進めており、今回販売代理店のダイワボウ情報システムとリョーサン菱洋の2社と協業に関して基本合意した。また、運用・保守を手がけるトゥモロー・ネットと連携して保守サポートを提供する。

  • パートナーとの共創で導入・運用体制を構築

    パートナーとの共創で導入・運用体制を構築

業務向けAIサーバ「AI-B43100」は「NVIDIA RTX Pro 6000 Blackwell Server Edition GPU」を最大8基搭載可能なモジュール設計にもとづくGPUサーバ。推論性能は32PFLOPS、4U対応、空冷方式を採用している。

業務用途でのAI活用やシミュレーション、ビジュアルコンピューティングを想定し、GPU、メモリ、ストレージなどを顧客の用途に応じて選択できる。推論やAIアプリケーション開発、業務システムへのAIの組み込みなどに対応する。

  • 業務向けAIサーバ「AI-B43100」の外観

    業務向けAIサーバ「AI-B43100」の外観

一方、大規模学習・推論向けAIサーバは、8基のGPUを「NVIDIA NVLink」で組み合わせたサーバ用基板「NVIDIA HGX Rubin NVL8」を搭載し、DLC(液冷)方式を採用。NVIDIA ConnectX-9 SuperNICアダプタ、同BlueField-4 DPU構成に対応し、LLM(大規模言語モデル)を含む生成AIモデルの学習・推論に適している。高密度・高出力の安定運用を実現し、AI学習基盤やデータセンターの中核用途にも適しており、2027年以降に受注開始を予定。

  • 大規模学習・推論向けAIサーバの外観

    大規模学習・推論向けAIサーバの外観

両モデルともに、NVIDIA Enterprise Reference Architecture(Enterprise RA)にもとづく、クラスタ展開に対応し、NVIDIA Quantum InfiniBand、同Spectrum-X Ethernetを組み合わせることでスケーラブルなAIファクトリーの実装を実現するという。

AIサーバ事業参入のステップ1ではAIサーバの販売と国内の運用・保守体制を構築。ステップ2でシャープが持つ顧客・現場接点を活かして、AI活用の支援を行うとともに、鴻海グループと亀山工場(三重県亀山市)の利活用なども視野に入れた国内の生産体制構築を検討していく。

そして、ステップ3ではフィジカルAIやエージェンティックAIの進展を見据え、さまざまな現場のAIを支えるAI基盤に発展させ、グローバル展開を目指す。これにより、国内の推論市場を主戦場に2030年度に売上高2500億円を目指す。