前回は、Excelで作成した問い合わせ管理表をMicrosoft 365 Copilot(以下M365 CopilotまたはCopilot)で分析し、問い合わせの傾向や対応の遅れ、業務改善のヒントを見つける方法を紹介しました。 今回は、すでにある表を分析するだけでなく、CopilotにExcelブックを直接編集させます。
題材は、複数の作業や期限を管理する「進捗管理表」です。Copilotを使って計算列を追加し、期限が迫った作業や期限を超過した作業を色分けし、さらに状況を確認するための集計表を作成します。
進捗管理表は更新するだけでは不十分
プロジェクトや部署内の作業をExcelで管理している職場は少なくありません。 たとえば、次のような項目を使います。
・作業名
・分類
・担当者
・開始日
・期限
・優先度
・進捗率
・状態
しかし、作業件数が増えると、表を更新しているだけでは全体の状況を把握しにくくなります。 特に確認したいのは、単なる作業一覧ではなく、次のような情報です。
・期限を過ぎている作業
・期限が近いのに進捗が遅れている作業
・担当者ごとの作業件数
・状態別の件数
・優先度が高い未完了作業
これらをExcelで表示するには、数式、条件付き書式、フィルター、ピボットテーブルなどを組み合わせる必要があります。
ExcelのCopilotにこうした複数の作業をまとめて依頼し、Copilotでブックそのものを編集できます。
今回使用する進捗管理表
今回は、社内システム更新プロジェクトの進捗管理表を例にします。
表には、作業ID、作業名、分類、担当者、開始日、期限、優先度、進捗率、状態の各列があります。
作業の状態には、「未着手」「作業中」「確認待ち」「完了」があります。 一見すると通常の作業一覧ですが、このままでは、どの作業を優先的に確認すべきか一目では分かりません。そこで、Copilotを使って管理に必要な機能を追加します。
Copilotに作業の完成形を伝える
作業を始める前に、元のExcelの進捗管理表は、必ずバックアップをとってください。Copilotが意図しない編集をしてしまう可能性もあるからです。 次に、ExcelでCopilotを開き、進捗管理表をどのような状態にしたいかまとめて指示します。 今回は、次のように入力します。
「この進捗管理表を使いやすくしてください。期限までの残り日数を計算する列と、対応状況を示す判定列を追加してください。完了していない作業のうち、期限超過は赤、期限まで7日以内は黄色で強調してください。さらに、担当者別と状態別の作業件数を確認できる集計シートを作成してください。」
※ExcelのCopilotペインの開き方については、前回記事の「Copilotを起動する」を参照してください。
これまでのように、「表を要約してください」「傾向を分析してください」と1つずつ質問するのではなく、今回は実現したい業務上の目的をまとめて伝えています。 Copilotは依頼内容を確認し、数式の追加、条件付き書式の設定、集計シートの作成など、必要な作業を組み立てます。
複数の変更を一度に依頼するときは、Copilotがどのような作業を行おうとしているか確認してください。意図と異なる場合は、ブックに反映する前に指示を修正します。
残り日数と対応状況を自動計算する
Copilotは、元の進捗管理表に「残り日数」と「対応状況」の列を追加します。 残り日数には、期限と現在の日付との差を求める数式が入力されます。 対応状況には、期限、進捗率、現在の状態などをもとに、次のような判定が表示されます。
完了
期限超過
要注意
対応中
(1)「進捗管理」シートタブをクリックする
(2)新しくCopilotが追加した、「残り日数」と「対応状況」の列
ここで重要なのは、Copilotが判定結果を文字として書き込むだけではなく、Excelの数式を使っていることです。期限や進捗率を変更すると、それに応じて残り日数と対応状況も更新されます。Copilotで作成した後も、通常のExcelブックとして継続的に利用できます。
数式バーを確認すると、Copilotがどのような条件で判定しているか分かります。
(3)数式を確認したいセルをクリックして選択する
(4)数式バーでCopilotが自動生成した数式を確認できる
ただし、「要注意」をどのように判定するかは職場によって異なります。期限まで7日以内を要注意とする場合もあれば、3日以内や14日以内とする場合もあります。 Copilotが作成した数式が、自分たちの運用ルールに合っているか確認してください。
条件付き書式で確認すべき作業を目立たせる
次に、Copilotが設定した条件付き書式を確認します。 完了していない作業のうち、すでに期限を過ぎている行は赤、期限まで7日以内の行は黄色で表示されます。
(5)書式設定を確認したいセルをクリックして選択する
(6)「条件付き書式」→「ルールの管理」メニューをクリックする
(7)Copilotが自動的に設定した条件付き書式を確認できる
数値や文字だけの一覧と比べると、優先して確認すべき作業が分かりやすくなりました。 Copilotは、Excelがもともと備えている条件付き書式を設定しています。そのため、設定後に期限や状態を変更すれば、セルの色も自動的に変わります。
なお、色だけで状況を区別すると、印刷時や画面の表示環境によって分かりにくくなることがあります。今回のように、「対応状況」の文字列と色分けを併用するとよいでしょう。
集計シートで全体状況をつかむ
Copilotは新しいワークシートを追加し、担当者別と状態別の作業件数を集計します。
担当者別の集計を見ると、特定の担当者に作業が集中していないか確認できます。 状態別の集計では、「未着手」「作業中」「確認待ち」「完了」がそれぞれ何件あるか把握できます。確認待ちが多ければ、実作業よりも承認や確認の過程で滞っている可能性があります。 必要に応じて、集計結果をグラフ化することもできます。
集計表やグラフが作成されても、件数が元の進捗管理表と一致しているか確認してください。特に空白セルや表記の揺れがあると、集計結果が分かれることがあります。 たとえば、「作業中」と「作業中 」のように末尾に空白が含まれていると、別の状態として集計される場合があります。
意図と違ったときは追加指示で修正する
Copilotが一度で希望どおりにブックを仕上げるとは限りません。 たとえば、期限間近の判定を7日以内ではなく3日以内にしたい場合は、その部分だけを修正するよう指示できます。
要注意の判定を、期限まで7日以内から3日以内に変更してください。条件付き書式も同じ基準に変更してください。
このように、最初から完全な指示文を考える必要はありません。 まず全体像を示してブックを作成し、結果を見ながら修正していく方法が現実的です。これは、人にExcel表の作成を依頼し、作成された表を見ながら調整していく作業に似ています。
変更後は、数式と条件付き書式の両方が修正されていることを確認します。一方だけが変更されると、対応状況の表示とセルの色が一致しなくなるためです。
Copilotにブックを編集させる利点
今回の使い方には、次のような利点があります。
第一に、どのExcel機能を使えばよいか分からなくても、業務上の目的から作業を始められます。 利用者が「期限超過を見つけたい」「担当者ごとの件数を知りたい」と伝えることで、Copilotが数式、条件付き書式、集計表などの機能を組み合わせます。
第二に、Copilotが作成した内容は、通常の数式や書式としてブックに残ります。AIだけで動作する特殊な表ではありません。
第三に、完成した表を見ながら、判定条件や表示方法を段階的に調整できます。
一方で、便利だからといって、変更内容を確認せずに実務で使用すべきではありません。特に、期限超過や要注意の判定は業務上の対応に影響するため、数式と条件が運用ルールに合っているか確認が必要です。
また、すでに業務で使っているブックをCopilotで大きく編集するときは、あらかじめファイルを複製し、コピーしたブックで試すと安全です。
まとめ
今回は、M365 Copilotを使って、Excelの進捗管理表に計算列、判定列、条件付き書式、集計シートを追加しました。 Copilotの役割は、表について質問すると回答するだけではありません。Excelの機能を組み合わせ、ブックを実際に編集する作業にも利用できます。 大切なのは、数式や機能の名前を並べて指示することではなく、 「この表を使って、何を確認したいのか」 を明確に伝えることです。
Copilotにブックのたたき台を作らせ、人間が結果を確認して運用に合わせて調整することで、単なる作業一覧を、日常的な判断に使える進捗管理表へ発展させることができます。
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