これまで2回にわたり、シコルスキーとエアバスが打ち出した、汎用ヘリコプターの無人貨物輸送機化構想を取り上げてきた。今度は、固定翼の小型輸送機を無人化する構想が登場した。テクストロンが提案するのは、セスナ408スカイクーリエのコックピットを撤去し、機首まで貨物室として活用するというものだ。無人ヘリコプターとは何が違い、どのような用途を想定しているのか。。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

セスナ408スカイクーリエとは、どんな輸送機なのか

テクストロンというとベル・ヘリコプターの親会社として知られているが、実は傘下のメーカーはベルだけではない。その他の傘下メーカーのひとつに、テクストロン・エヴィエーションがある。もともとテクストロンの傘下にあったセスナに加えて、ビーチクラフトやホーカー・エアクラフトの事業を承継した。

セスナというと、日本では軽飛行機の代名詞みたいな扱われ方をしているが、小型・単発の軽飛行機だけ手掛けているわけではない。航空自衛隊や国土交通省航空局などで導入している、ビジネスジェット機のサイテーションもセスナの製品である。

  • セスナというと軽飛行機の代名詞みたいな扱いだが、軽飛行機だけ作っているわけではない 撮影:井上孝司

    セスナというと軽飛行機の代名詞みたいな扱いだが、軽飛行機だけ作っているわけではない 撮影:井上孝司

そのセスナ製品のひとつに、モデル408スカイクーリエがある。高翼の双発ターボプロップ機で、フェデックスをローンチ・カスタマーとして2017年にローンチ。2020年5月に初飛行を実施した、まだ歴史の浅い機体だ。米連邦航空局(FAA : Federal Aviation Administration)の型式証明を取得したのは2022年3月だから、ほんの4年半前である。民間型のお値段は1,100万ドルほど。

左右の主翼に取り付けているエンジンは、プラット&ホイットニー・カナダのPT6Aターボプロップ・エンジン。胴体は四角形に近い断面で、サイズを抑えつつ最大のキャパシティを確保するよう工夫した様子が見て取れる。実用上昇限度は25,000ft(7,620m)と、やや低め。最大巡航速力は390km/h。

19名(5,000lb, 2,268kg)を乗せられる旅客型に加えて貨物型があり、これはLD3コンテナを最大3個搭載可能、重量ベースでは6,000lb(2,722kg)が上限となる。燃料搭載量は最大4,826lb(2,189kg、720gal)だが、貨物型の空虚重量11,000lb(4,990kg)に燃料と貨物を満載すると最大離陸重量19,000lb(8.618kg)を超過してしまうので、どちらかを減らす必要がある。

  • 貨物型スカイクーリエのサイドビュー。側面の扉から貨物を出し入れする。LD3コンテナの搭載も可能 出典:Textron Aviation

    貨物型スカイクーリエのサイドビュー。側面の扉から貨物を出し入れする。LD3コンテナの搭載も可能 出典:Textron Aviation

コックピットを撤去、機首まで貨物室に転用

もちろんスカイクーリエ自体は有人機だから、機首にコックピットがあり、正副操縦士が乗り込む。しかし、今回の無人化構想では、このコックピットを取り払って貨物室に転用するとともに、機首全体が上方にガバッと開くカーゴドアを設けることを想定している。また、カーゴランプも設け、車両の自走搭載・卸下を可能にする構想だ。

  • スカイクーリエ無人型の機体内部を示した構想図。機首付近まで貨物スペースとして活用する構想がわかる 出典:Textron Aviation

    スカイクーリエ無人型の機体内部を示した構想図。機首付近まで貨物スペースとして活用する構想がわかる 出典:Textron Aviation

操縦士が乗らないので自律制御の仕掛けが必要になるが、そこではマーリンラボ(Merlin Labs)という会社が協力、同社の人工知能(AI : Artificial Intelligence)エージェントを搭載して自律制御を行うとしている。

搭載量や航続距離からして当然だが、大量の貨物を遠距離輸送する用途はハナから想定していない。端末輸送に充てる機体という位置付けで、乱暴な例えをすれば空飛ぶ宅配軽トラである。

つまり、もっと大型の輸送機で運んできた貨物を仕分けして、短い滑走路しかない、前線に近い飛行場まで空輸する場面でスカイクーリエ無人化版を使ってみませんか、という話になる。主として太平洋地域の島嶼における利用を考えているという。

大型機を端末輸送に充てるのは不経済だが、小型のスカイクーリエ無人化版なら経済的に運用できる。しかも無人だから長距離の幹線輸送のためにパイロットを控置しておける。と、これがメーカー側の言い分であるそうだ。

もちろん、墜とされたとしても人命の損耗につながらない利点もあり、これは前線に近い場所だと効いてくる可能性がある。貴重な積荷が失われる問題はあるにしろ。

また、コックピットをつぶして貨物室に転用するから、貨物室のスペースが大きくなる。航空貨物は重量の割に嵩張るものが多いという定説があるが、そうすると、搭載量が同じでも貨物室を大きくできる方が、能力を有効に使えそうでもある。

無人ヘリと固定翼機、貨物輸送では何が違う?

レッキとした固定翼機であるから、離着陸の際には滑走路が必要。ベースモデルのスカイクーリエは、離陸滑走距離は3,660ft(1,116m)とされるが、貨物や燃料の搭載量を減らせば、もっと短くできる可能性もあろう。

とはいえ滑走路の必要性はゼロになり得ないから、そこは無人貨物輸送ヘリコプターと比較した場合のハンデとなる。その代わり、ヘリコプターよりもいくらか速いし、搭載量の面で有利になるかもしれない。

すると、運用者が「滑走路が必要でもいいから、速くて搭載量が大きい機体を」となるか、「搭載量やスピードは妥協するから、滑走路が要らない機体を」となるかで選択が分かれそうでもある。

ひとつ気になるのは、自律制御にする場合の操縦系統。フライ・バイ・ワイヤならまだしも、スカイクーリエの操縦系統はシンプルな手動式の機械式操縦系統を使用している。安価でシンプル、整備しやすいのは利点だが、それをどうやってコンピュータ制御で動かすのか、そこで操縦系統を大きくいじることになれば、コストや開発リスクを増やすことになってしまう。

もっともこれ、実は既出のヘリコプター2機種にも同じことがいえるのだが、それでもシコルスキーのS-70/H-60一族はすでにMATRIX自律制御システムを導入した実績がある。しかし、スカイクーリエの自律制御化は「これからの話」である。

なお、操縦系統は極めて保守的な設計だが、有人型のコックピットはグラスコックピット化してある。使用するアビオニクスはガーミンG1000NXiで、さらにガーミンGFCオートパイロットを組み合わせてある。すると、このオートパイロットとAIエージェントを連接して自律制御する話になるのだろう。